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『すべてがFになる -THE PERFECT INSIDER-』第2巻 森博嗣(作) 霜月かいり(画) 【日刊マンガガイド】

2016/04/09


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『すべてがFになる -THE PERFECT INSIDER-』


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『すべてがFになる -THE PERFECT INSIDER-』第2巻
森博嗣(作) 霜月かいり(画) 講談社 ¥581+税
(2016年3月7日発売)


ミステリィ作家(森はmysteryを「ミステリィ」と表記する)森博嗣のデビュー作『すべてがFになる』を、真田十勇士に材を採った『BRAVE10』などの著作がある霜月かいりがマンガ化を手がけたもの。3月に発売された第2巻で完結となった。

N大学工学部准教授・犀川創平は、研究室の学生たちとともに妃真加島を訪ねた。
島には天才プログラマ真賀田四季の研究所があった。

真賀田四季は、11歳で博士号を取得し天才少女と呼ばれていたが、15年前、14歳の時に両親を殺害した。
心身喪失で無罪となるが、その後は島で“隔離”された状態で研究を続けているのだ。

犀川は、真賀田女史に興味を抱いて、学生の西之園萌絵とともに研究所を訪問するが、2人が目にしたものはウエディングドレスをまとい、両腕と両足を切断された死体であった。

事件が発生したのは、四季が開発したシステムにより管理されたセキュリティの高い研究所。
死体は自動制御のカートに乗せられ、博士の部屋から飛び出してきたのだが、部屋への出入りはすべて映像に記録されており、それを調べた限りではだれも出入りした者がいない――という近未来的な設定の密室殺人や、四季のパソコンに残された「すべてがFになる」と謎めいたメッセージは読者の興味をひきつけることだろう。
こうした謎を犀川は、萌絵と議論を重ねながらクールに解き明かしていくのである。

ところで、小説を映像化する場合には、登場人物のイメージを読者に納得させられるかが重要である。本作の版元である講談社も同じ思いを抱いたようで、コミカライズにあたりコンペを行っている。
そのなかで原作者・森博嗣が選んだのが霜月かいりであった(選考に臨んだ2名の編集者、夫人でイラストレーターのささきすばるも同意見だったという)。

第2巻の巻末で、森は霜月の絵のすばらしさを次のように語っている。
「登場人物は冷徹かつ精悍な風貌で、鋭くこちらを見すえている。おそらく、真賀田四季の絵としてこれほど相応しいものはなかっただろう、と感じた。西之園萌絵もイメージに非常に近い。犀川は少々格好良すぎるけれど、読んでいるうちに意外にもそれらしく見えてくる。霜月氏の創作の力がここにある」

なお、森博嗣原作の〈四季〉シリーズをコミカライズした、猫目トーチカ『四季』は、真賀田四季の少女時代を描いたものである。
『すべてがFになる』の発端ともいえる、四季による両親の殺害事件がくわしく描かれているので、本作をより深く楽しむためにはおさえておくべき作品だと思う。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)で国内本格ミステリ座談会とミステリコミックの年間総括記事等を担当。また現在発売中の、「ミステリマガジン」5月号(早川書房)でミステリコミックレビューを担当。

単行本情報

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