365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月10日は教科書の日。本日読むべきマンガは……。
『日本人の知らない日本語』第1巻
蛇蔵&海野凪子 KADOKAWA ¥880+税
4月10日は教科書の日。一般社団法人である教科書協会が定めた日だ。
新学期を迎え、児童生徒が真新しい教科書を手にする時期であることと、「良(よ・4)い図(と・10)書」の語呂あわせでこの日に決められたそう。
恋愛の教科書が欲しい、とか、偉人の顔に落書きをしたとか、日本人にとって教科書はごく身近な本だ。
なので、あえて日本人が見ることの少ない「日本語の教科書」について取りあげているマンガを紹介しよう。
その名も『日本人の知らない日本語』。
マンガの本筋は、日本語教師であるなぎこ先生(海野凪子)が日本語学校にて、国籍も学習の目的もバラエティに富んだ外国人学生たちへ日本語を教える経験談がもととなっている。
それを『決してマネしないでください。』でも知られる蛇蔵がマンガとして構成したコミックエッセイだ。
外国で出まわっている日本語の教科書には「素敵なお召しものですね」「いえ、こんなのはぼろでございます」などと時代がかった文例が載っている。
チェコの教科書にいたっては「おじさんはあさしん聞をよんで、午後おどりました」とVOWネタになりそうなシュールさだ。
さらに実際に講義で使う日本語の教科書にも、「玉」の訓読み「たま」の用例として「金玉」と堂々と書いてあったりするので油断できない。
これらも、数多くある爆笑エピソードのほんのひと握りにすぎない。
日本語を勉強する学生たちは、驚くような言い・書き間違いや勘違いを起こし、笑えるシーンも多いが、ふだん日本語を話していても知らなかった敬語の使い方やものの名前、数え方についても自然に頭に入ってくる(「おそれいりますが」と「さしつかえなければ」の違いなんて、初めて知った!)。
マンガという媒体は、何かを学ぶのに最適な教科書にもなりうる。
加えて、研究熱心で優しく、ときに厳しい先生、同じ志を持つ仲間たちはりっぱな教科書にもまさる。
文化や言葉の壁にぶつかっても努力を惜しまない学生たちを見ていると、何かを真剣にやろうとする過程での失敗は、周囲から嘲笑ではなく、励ましたくなる好意を誘うことも実感できる。
新年度のやる気をアップさせるマンガとしても、ぜひどうぞ。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。