365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月16日はアポロ16号が打ち上げられた日。本日読むべきマンガは……。
『BILLY BAT』第9巻
浦沢直樹(著) 長崎尚志(ストーリー共同制作) 講談社 ¥600+税
きょうはアポロ16号が打ち上げられた日である。
1972年4月16日(日本時間)、アメリカのフロリダ州ケネディ宇宙センターから打ちあげられたアポロ16号は、史上5度目となる月面着陸を成功させた。
アポロ計画とは、月面探査を目的に1961年から実施されたアメリカの宇宙飛行計画だが、計画自体が合衆国政府による捏造であるとする説が存在する。
いわゆるムーン・ホークス(Moon Hoax)説である。
アポロ11号の月面着陸の中継映像は、NASAによる“でっち上げ”であり、ハリウッドのスタッフがアリゾナの砂漠(もしくはスタジオ)で「歴史的瞬間」を撮影したとする陰謀論だ。
ムーン・ホークス説は、一般的には1974年にビル・ケイシングが出版した『We Never Went to the Moon(人類は月へ行っていない)』によって流布されたとされている。
しかし日本では、まだアポロ計画が継続中の1970年の時点で、小説家・草川隆が『アポロは月に行かなかった』というSF小説を上梓している。日本の特撮映画監督が日本政府首脳からアメリカ行きを命じられ、月面着陸の映像を撮影するという内容だ。
本作は2014年に再版されたので、現在でも読むことができる。
また、1970年発行の小学館「デラックス少年サンデー」2月号に掲載された手塚治虫「赤の他人」(『手塚治虫名作集17 グランドール』集英社文庫所収)でも、主人公がアポロ11号の月面着陸を疑うシーンが描かれている。
主人公アキラは、この世界はすべて「劇みたい」と感じており、自分の周囲のものはすべてセットであり、だれかがこの劇(=アキラの人生)を見守っているのではないか、と疑っている。
ジム・キャリー主演の映画『トゥルーマン・ショー』(1998年)にも通じるテーマだが、作中でアキラはアポロ11号の月面着陸について「それらしくつくったニセモノを見せられているんじゃないか」と感想を述べるシーンがあるのだ。
このようにアポロ計画を疑う見方は当時から存在し、現在でも根強く都市伝説として残っている。
浦沢直樹『BILLY BAT』は、マンガキャラクター「ビリーバット」に秘められた謎をめぐる争いが物語の主軸だが、下山事件(1949年)、天正伊賀の乱(1581年)、ケネディ暗殺事件(1963年)といった歴史上の様々な出来事が題材となり、時代や地域を縦横無尽に行き来しながらストーリーが進展していく。
そしてムーン・ホークス説もそのうちのひとつ。1964年に日本の特撮映画監督・明智はアメリカに呼ばれ、アリゾナの砂漠にあるスタジオで月面世界をつくることになる(第9巻)。
それがビリーバットをめぐる物語とどう絡むのか、本編で確認しよう。
ちなみに、オカルト系作家の“サイエンス・エンターテイナー”こと飛鳥昭雄も、このアポロ計画捏造説を唱えるひとり。しかも、きょう4月16日は彼の誕生日でもある。
この奇妙な符号は、われわれに何を語りかけているのだろうか……ッ!?
……陰謀論は、あくまでエンターテインメントの範囲で楽しもう。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama