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『虫籠のカガステル』第4巻 橋本花鳥 【日刊マンガガイド】

2016/04/16


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『虫籠のカガステル』


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『虫籠のカガステル』第4巻
橋本花鳥 徳間書店 ¥620+税
(2016年3月12日発売)


橋本花鳥の『虫籠のカガステル』が第4巻に入り物語が大きくうねりだした。

突如として人が巨大な虫になる奇病「カガステル」。カガステルを発症した人間は理性を失い、人間を喰い、虫同士で繁殖し、数を増やしていった。
その脅威により、人類の3分の2が食い殺された頃、人間はようやく虫の駆除に乗り出した。駆除屋として生きるキドウは、商人の護衛中に父を失った少女・イリと出会う。

イリは新たな生活をスタートさせ、キドウとも少しずつ距離を縮めていく。
そしてイリが己の過去を思い出した時、世界が大きく変わり始めるのだった。

この作品は著者の橋本花鳥が橋本チキン名義で自身のWebサイトで2005年から2013年の間に発表したもの。
2015年には仏語版も発売され、フランスのマンガ賞「Prix Mangawa」で少年マンガ部門も受賞し、日本よりも先に海外で知られることとなった作品だ。

虫、植物とマンガのこちら側の世界でも身近である存在を通して、世界の随に迫るような重厚なテーマを描き出している。
同じく「コミックリュウ」から発売されている『アルボスアニマ』でも同じことがいえるが、物語を描くなかで人間とは異なる生きものや植物、その生態を通して何かを洗い出そうとしているのではないか。
登場人物それぞれがなぜ今どうしてここにいるのかに向きあっている姿は、1人ひとり丁寧に見ていってほしい。

橋本がWebでこのマンガを描き始めたのは2005年。あの頃はまだSNSは発達しておらず、たしかまだ「足跡」「拍手」「キリ番」などの言葉が古びていなかった時ではないだろうか。
作品を読んでもらったり、サイトに人を呼びこむことはそう簡単ではなかっただろうと想像する。描きたいものを描いた、すばらしいマンガだと思う。

2005年から8年も描き続けたその熱意にも、敬意を表したい。



<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
ブログ「自分です。」

単行本情報

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