日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『セクシーボイス&ロボ』
『セクシーボイス&ロボ』第1巻
黒田硫黄 講談社 ¥680+税
(2016年3月23日発売)
2001年に単行本が刊行され、2002年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門で大賞を受賞。2007年には大後寿々花&松山ケンイチ主演でテレビドラマ化もされた、黒田硫黄の名作がめでたく復刊。
テレクラのサクラをしながらスパイ修行をする、「セクシーボイス」というコードネームをもつ少女、ニコ。
偶然出会った謎の「おじいさん」からの依頼を受け、さえない相棒ロボを手足に使い、変幻自在の声帯模写を生かして、風変わりな事件を解決してゆく彼女の14歳の女の子ならではの軽やかさと大胆さが、なんともすがすがしく、ジブリ映画の一連のヒロインを喚起せずにいられない!
一筋縄ではいかない登場人物らの奇妙かつコミカルなやりとり、黒々とした墨の筆跡が沁みる独特の世界観、躍動感あふれるダイナミックな構図やページ展開、
「今救えるのは、宇宙で私だけ」
「意志でなく、才能が行く道を選ぶ」
といったキメ台詞もすばらしく、読めば読むほどにジワジワとハマる。
宮崎駿がファンを公言するなど、クリエイターからも熱い支持を集める一方で、玄人好みのイメージもある黒田作品。
しかし、本作は氏の文学性と娯楽性が絶妙なバランスで具現化された作品ゆえ、黒田作品を未読の人にも入門編としておすすめしたい。
新装版発売にあたり、 カバー描き下ろしに加え、新規のオマケも収録。
黒田ファンにもうれしい1冊だが、願わくば、次こそは新作の発表を……期待せずにいられません。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69