人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、ユペチカ先生!
『このマンガがすごい!2018』でオンナ編第3位にランクインした、注目の“異文化交流ライフ”マンガ『サトコとナダ』!
日本人大学生・サトコが留学先のアメリカで、運命のルームメイト・ナダ(イスラム教徒女子)と出会い、今まで触れることのなかった文化・考え方・環境に感化され、ナダといっしょに成長していく物語です。
今回、デビュー作ながら『このマンガがすごい!2018』の上位にランクインした、著者・ユペチカ先生にインタビューをさせていただきました。ユペチカ先生が本作を手がけるに至るまでには、意外な過去がありました。漫画家とは違う素顔とは……?
さらに、『このマンガがすごい!2018』ランクインで、ユペチカ先生にゆかりのある方が困惑する事態も発生!? い、いったい何が起きたんだ!?
<インタビュー第1弾も要チェック!>
【インタビュー】ユペチカ『サトコとナダ』おもしろさの秘密には、ある「神様」の存在があった!
ユペチカ先生を創作の道に引きずりこんだマンガとは!?
――本作以前にマンガを描かれた経験は?
ユペチカ オリジナルは『サトコとナダ』が初めてです。
――この絵のタッチは以前から?
ユペチカ いえ、この作品を描く時に、内容の雰囲気に合わせてシンプルでコミカルな絵柄にした……つもりですが、おそらく第三者の方から見たら、変化は感じられないと思います(笑)。
――当初、ユペチカというペンネームも題材もあいまって、外国人の方が描いたのかなと思ったんですよね。
ユペチカ けっこういわれます。日本人です(笑)。
――白と黒のコントラストの強さも異国風に見えるのかもしれません。
ユペチカ 今フォトショップで描いてるんですが、けっこう経つのにまったく使いこなせていなくて、ほぼグレースケールと白黒で……。編集の方から先に、トーンを多用しすぎると画面の印象が薄くなることが懸念されるというアドバイスを受けていたのもあります。
――サトコのシンプルな顔の描き方もバンド・デシネの作家っぽく見えたりして。どういうふうにユペチカ先生の絵心が育っていったのか興味深いです。
ユペチカ マンガやアニメはずっと好きでしたが、一番大きい存在はジブリだと思います。『風の谷のナウシカ』のマンガが大好きで。アメリカでも英語版を買い直したりしたんですよ。アメリカ版のナウシカは聖書みたいな装丁なんです。マンガを描き始めたのは高校3年の部活引退後です。今もまだ修行中です。
――子どもの頃に好きだったマンガは?
ユペチカ 『幽遊白書』『ドラゴンボール』あたりを愛読していました。友だちに借りたりしていろいろ読んではいましたが、中学時代の一番のお気に入りは『BLEACH』だったので、やっぱり少年マンガ寄りでしたね。あと最近では『ヘタリア』です。
――その頃はマンガを描いたりはしていなかったんですね。
ユペチカ やっておけばよかったです。漫画家さんってみんな、子どもの頃から模写に励んだりして技術を磨いてきた方が多いですよね。私はノートの端に落書きする程度でした。
――ほかにも何か夢中になっていることがあった?
ユペチカ バレエを長くやっていました。あ、そうだ……。それで中学生くらいからバレエのマンガをめっちゃ読むようになったんです。『トウ・シューズ』(水沢めぐみ)とか。もうちょっと、あとになると『絢爛たるグランドセーヌ』(Cuvie)とか。
イスラム教徒の方からのファンレターに感激!
――「ツイ4」での連載が決まり、単行本化が決まり。いつのまにか「漫画家」になっていたわけですね。
ユペチカ 今でも信じられないような気持ちではありますね。第2巻が出たくらいで、ようやくじわじわ実感しはじめたような感じですが、すごくうれしいです。
――第1巻が出た時点で話題になっていましたし、反響も届いていたのでは?
ユペチカ 最初は「恥ずかしい、そんなに見ないで」みたいな感じで。ほかの漫画家さんの作品と並んでみると、自分の力の足りなさを感じてはずかしくなることばかりだったんですが、編集さんの支えやみなさんの励ましのおかげで、今はやっと胸を張って「いつも読んでくださってありがとうございます」といえるようになりました。
――読者の感想などで印象に残ることは?
ユペチカ この前、イスラム教徒と思われる在日留学生の方からメールをいただいたんです。「イスラム教徒のことを描いてくれて、ちゃんと説明してくれて感謝しています」「ナダをかわいく描いてくれてありがとう」と、がんばって日本語で書いてあって感激しました。日本のあるモスクをスケッチしていたら「作者さんですか?」と声をかけられたり……。日本人イスラム教徒の方も読んでくれているんですね。日本人に紹介するつもりで描いたものが、イスラム教徒の方々にも楽しんでいただける作品になっていたということがうれしいです。
担当編集 非常にタイミングに恵まれた作品でもあると思います。ちょうど短期連載していた頃、トランプ氏が大統領就任して「移民を入れない」という勅令を出しました。そのニュース記事を語りながら「こういうマンガもあるよ」と『サトコとナダ』をブログなどで紹介してくれた方もいて。
――東京オリンピックもありますし、日本にいても外国の方と接する機会が増えるわけで、そういう意味からも『サトコとナダ』は大きい役目を果たしそうです。
ユペチカ 相手を知らないと仲よくしたくてもできないことがあるということ。それから、宗教について語るのはタブーじゃないということは伝えたいです。「知らないことを知ってもらいたい」というと強すぎるかもしれませんが、「知らない、怖い」というのをなくしてもらえたらなと思っています。