サウジアラビアでマンガ講師を務めた貴重な体験
――第2巻の巻末に『サウジアラビア旅行記』というエッセイコミックが掲載されていますが、貴重な経験をされましたね。
ユペチカ けっこう過酷でしたが、本当にいい経験をさせてもらいました。簡単には入国できない国ですから。サウジアラビアでは、今の皇太子が石油以外でも経済を盛りあげようという政策をされていて、その一環で創作を教えてほしいということで招待を受けたんです。「私が教えられることなんてあるのか……?」と戸惑いました。
――現地では、当初と予定が違って慌てたことも多々あったようですね。
ユペチカ 当初、生徒は5人と聞いていたので手取り足取り教えるつもりでいたのが、30人になっていたり。ならばとプレゼンテーションのデータをつくったら、プロジェクターが使えなくなったり。参加者の女の子たちのなかにはプロっぽい絵を描く人もいれば、まったくの初心者もいる。どうやって教えようと思いましたが……。あの体験のおかげで、何が起きても動じなくなったかもしれません(笑)。
――アメリカではなく、サウジアラビアでイスラム教徒の人々に触れたことでまた違った側面が見えましたか?
ユペチカ アメリカに留学してきている子たちは恵まれた環境の子が多いとはわかっていましたが、やはり自分のために生きられない女の子たちがたくさんいるのを肌で感じました。授業中に、家の都合だったり、「夫が帰ってこいといっているから」という理由で帰らなければならない方がいて。びっくりすると同時に、『サトコとナダ』で優しい世界ばかり見せているのもどうなのかなと考えさせられもしました。だんだんお互いにうち解けていって、見せてくれた素顔については「やっぱり私たちと何も変わらない」のですけど。
――ところで、この自画像はいったい……?
ユペチカ タピオカミルクティーが大好物なんです。エッセイを描くにあたって、急きょ自画像キャラをつくらなきゃならなくなって考えました。
――倒れた時に中味がこぼれるのがめちゃくちゃかわいいです。もっと描いてください!
ユペチカ 怒ったらタピオカが吹き出ます(笑)。
『このマンガがすごい!2018』ランクインがユペチカ先生・母の逆鱗に触れた!?
――あらためまして『このマンガがすごい!2018』オンナ編3位受賞、おめでとうございます。『このマンガはすごい!』は読んだことがありましたか?
ユペチカ もちろんです。子どもの頃から知ってる賞なので、最初にランクインと聞いたときは「ええぇっ!?」ってなりましたよ。しかも発売まで箝口令(他言厳禁)が敷かれていたので、本当なのかよくわからなくなったり。じつは今でも信じられないです。夢かなって……。
――さすがにもう信じてください(笑)
ユペチカ ホントに感謝してます。実感がなかったんですけど。本屋さんでランキング順に本を並べてるじゃないですか。私、母の影響で萩尾望都さんの大ファンなんですが……。萩尾望都先生が2位で、私が3位で隣に並んでる光景を信じられない思いで眺めています。で、うちの母が不思議そうにいうんですよ。「なんでアンタが3位なの!?」って(笑)。
――お母さん、そこは喜んであげてください(笑)。
ユペチカ ホントにうれしくて感謝でいっぱいです。疲れて帰ってきた時は『このマンガがすごい!2018』の表紙を見て、元気をもらっています。こういった評価をいただけたことは自信につながるし、次もがんばろうって思えます。ありがたみがこれからのエネルギーにつながっています。
――最近はどんなマンガを読んでいますか?
ユペチカ 一番楽しみにしているのは、森薫さんの『乙嫁語り』ですね。
――漫画家になってから、マンガの読み方って変わりました?
ユペチカ みんな絵がうまいなぁと……(笑)。今もずっといち読者として楽しんでいるのは変わらないですが、たまに「これすごい巧みなコマ割りだ」とか気づくことがあります。今まで何の気なしに読んでいたけれど、立ち止まって「この作画、すごく時間かかっただろうな、大変だっただろうな」と作者さんたちの苦労を思ったり。描く側になって初めて、作品を生みだすたいへんさを知りました。そのぶん、前よりもありがたいと思って大切に読んでるかもしれないです。
――まだ先の話とは思いますが、いずれ描いてみたい作品の構想はありますか?
ユペチカ オリジナルは『サトコとナダ』が初めてなので、まだ全然具体的には考えられないですが、落ちついた際に、オリジナルのキャラクターを考えてみたいなと思っています。『サトコとナダ』でオリジナルを描く楽しさを知りましたので。そうですね、長くやっていたので、バレエのことは描いてみたいかも。
――いいですねぇ!
ユペチカ それから、やっぱり歴史が好きなので歴史のマンガも。じつは最近クレオパトラにハマってて、いろんな本を読み漁っているんです。クレオパトラはめちゃくちゃ美容に力を注いでいたのは有名ですが、幼少期からずっとクレオパトラについて美を支えていた、2人の侍女がいたことを知って。このスペシャリストの話はちょっとおもしろいかなと……。ハチミツのお風呂や、バラを浮かべたお風呂に入ったのはクレオパトラが最初らしいんですよ。現代の美容部員が古代エジプトに行っちゃうとか。『JIN-仁-』の美容版みたいにするとか?
――今聞いてる時点でもすでにめっちゃおもしろそうです! では最後に、読者にメッセージをお願いします。
ユペチカ 多くの方に『サトコとナダ』を読んでもらえてホントに幸せだと思っています。これからも2人のことを見守ってもらえればうれしいです。最後までよろしくお願いします!
取材・構成:粟生こずえ
<インタビュー第1弾も要チェック!>
【インタビュー】ユペチカ『サトコとナダ』おもしろさの秘密には、ある「神様」の存在があった!