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4月29日は昭和の日 『昭和の中坊』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/04/29


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

4月29日は昭和の日。本日読むべきマンガは……。


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『新装版 昭和の中坊』第1巻
末田雄一郎(作) 吉本浩二(画) 双葉社 ¥680+税


「4月29日といえば天皇誕生日」と、うっかり頭に思い浮かべてしまうアナタ! アラフォー以上の世代ですね。わかります。

平成生まれのヤングたちに、いちおう説明しておくと、本日は昭和天皇(1901年~1989年)の誕生日。1949年から1988年までは「天皇誕生日」として国民におなじみの祝日だったのだ。
昭和天皇崩御の後は「みどりの日」(1989年~)に改称。2007年には「昭和の日」と改められた。なるほど、すっかり忘却の彼方だけど、「みどりの日」時代も20年近くあったのですな。

てなわけで“きょうのマンガ”は『昭和の中坊』をピックアップ。
バラエティ番組等で“昭和生まれ”だとか“昭和の男”だとか、ひとくくりで語られているが、60年以上の歴史を誇る元号だからして、太平洋戦争以前とバブル前夜ではまったく様相が違う。
なんとなく昭和というと『三丁目の夕日』のような活気に満ちた高度成長期をイメージしがちだが、40代・50代・60代・70代と、世代によって思い出す風景は異なるはずだ。

この『昭和の中坊』は昭和52年からスタートする。主人公は東京在住の中学1年生・猿田清志。「志が濁っているから」という酷い理由で、キヨシではなくニゴシと呼ばれている。
ニゴシはとにかくエロいことに興味津々の13歳。悪友の滝沢や丸木といっしょに、毎日シモネタ話に花を咲かせている。
ただし彼らは“平成の中坊”のように情強ではない。女性の大事なところはおろか、おっぱいすらもマトモも拝んだことがないのだ。

ビデオデッキも普及しておらず、携帯電話もパソコンもネットもない時代。彼らがエロ知識を仕入れる手段は、情報通の先輩や耳年増の友人、深夜テレビに深夜ラジオ、そして、なんといってもエロ本だった。
ニゴシはエロ本を手に入れるため、あらゆる努力を惜しまない。深夜3時にエロ本自販機へ突撃し、河原から朽ち果てたエロ本を探し出し、悪書追放の白ポストに手を突っこむのだ。

原作は『駅員ジョニー』などで知られる末田雄一郎。昭和39年生まれの末田は、自身の中学時代を生き生きとニゴシたちに投影した。
作画を担当するのは『ブラック・ジャック創作秘話』の吉本浩二。吉本は昭和48年生まれなので、末田よりもひと世代下にあたるが、昭和50年代の空気を完璧に再現しており、驚かされる。

ググれば解決する現代と違い、エッチな単語ひとつ解読するだけでも、非常に難度が高かったあの時代。やり場のないリビドーに悶絶するニゴシたちの姿は、おかしくもいとおしく、ペーソスにあふれている。
中学生たちが、悲壮感を漂わせながらエロに臨んでいたあのころ。これもまたひとつの昭和であり、貴重な記録だ。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。公開中の映画『アイ アム ア ヒーロー』の劇場用プログラムで花沢健吾先生と藪を演じた長澤まさみさんにインタビューしております。

単行本情報

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