365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月5日は、旧日本陸軍の風船爆弾が戦果をあげた日。本日読むべきマンガは……。
『闇のイージス』第19巻
七月鏡一(作) 藤原芳秀(画) 小学館 ¥505+税
5月5日は、旧日本陸軍の放った風船爆弾が戦果をあげた日である。
“風船爆弾”などと言うと、どこか牧歌的な印象を抱くかもしれないが、実体は気球に近い。
直径10メートルの気球に爆弾や焼夷弾、電探などを装備した「ふ号兵器」は、ジェット気流に乗って太平洋を横断し、米国オレゴン州やミシガン州にまで到達した。
1944年11月から作戦は開始され、1945年3月に終了するまで、合計9000発以上の風船爆弾が放球された。そして5月5日、風船爆弾がもたらした不発弾に触れた民間人がオレゴン州で爆死したのである。
アメリカ軍は合計285発がアメリカ本土に到達したのを確認しているが、戦時中は風船爆弾に関する情報はすべて秘匿された。アメリカ軍は、日本軍による生物兵器の搭載を懸念したのである。
事実、日本軍は「ふ号兵器」用にウイルスを製造していたが、最終的には昭和天皇が裁可しなかったため、生物兵器の使用は回避されたといわれる。
『闇のイージス』(七月鏡一・作、藤原芳秀・画)の第19集には、この風船爆弾が登場する。
主人公の楯雁人(たて・かりと)は裏社会のボディーガードであり、「イージスの楯」と呼称される“護り屋”である。
「蝶(バタフライ)」と呼ばれるテロリストと対峙するが、この第19集では“砂漠の虎”の異名を取る隻眼のイラク人傭兵ムハンマド・サイードと激突する。
サイードの計画は「フゴー」と呼ばれているが、それは「ふ号爆弾」に由来している。サイードはアメリカ本土にバイオテロを仕掛けるために、かつて日本軍が風船爆弾を放球した場所へと潜入し、風船爆弾による天然痘ウイルスの散布を画策するのであった。
作中では風船爆弾のしくみや歴史的背景を詳細に解説している。
雁人とサイードの対決もさることながら、こちらも見どころだ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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