日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『棺の中は黄色いバラ』
『棺の中は黄色いバラ』第1巻
タカハシマコ 幻冬舎
(2016年4月23日発売)
繊細でかわいらしい絵柄で、しかしダークで毒を含んだストーリーを紡ぐ著者の最新作は、タイトルからしてタカハシマコ・ワールド全開。
もちろん内容も期待を裏切らない。
女子中学生・茨木スミカのクラスにやって来た転校生・細貝柊はどこか陰のある少年。
彼は保護司である老人のもと、庭師の修行をしていることから柊の過去はすぐに周囲に知れわたってしまう。柊は、過去に重大な犯罪をおかしていたのだ。
柊に対してあからさまに距離を置く級友たちのなかにあって、スミカだけは無邪気に彼に近づいていく。
その理由は、“人殺しの気持ちが知りたい”から……。
スミカの家庭は相当に複雑だ。
今は、高校時代に家出をして10年ぶりに戻ってきた姉と2人暮らしをしているのだが、この姉も謎に満ちているし、父と母についての詳細も今のところ深くは明かされていない。
さらにはスミカの同級生たちの、ことに女の子特有のウラとオモテの顔もじつに緻密に描写されていて、これからどうドラマに絡んでくるのか興味がつきない。
柊の暮らすバラ園のある洋館の美しさと不穏さのコントラストも否応なくムードを盛りあげる。
ミステリー好きにもオススメの一作だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」