年々減りつつある、街の小さな本屋さん。しかし目黒区には、小型店にもかかわらず豊富な品ぞろえを誇るマンガ専門店・恭文堂コミッククラフト店が存在する。
マンガ専門店というだけあって、純粋なマンガ好きの常連客が多いという。
今回は、マンガ好きに話題の、青年誌、さらには男性誌、いわゆる「おっさん向け雑誌」などに連載しているマンガのなかから、ぜひ女性にも読んでほしい4作品を、恭文堂コミッククラフト店の早川博志さんにうかがった。
恭文堂コミッククラフト店イチオシの4冊!!
『ケンガイ』大瑛ユキオ
『ケンガイ』第3巻
小学館 大瑛ユキオ \552+税
(2014年8月29日発売)
レンタル屋でバイトを始めた主人公・伊賀くんは、1歳年上の先輩・白川さんに一目ぼれしてしまいます。しかしその女性は、職場で恋愛対象“ケンガイ”と言われていて……。
それでもなんとか白川さんに好きになってもらうために、あれこれ試行錯誤する伊賀くんの恋愛奮闘記です。
男はみんながみんな読者モデルみたいな人を好きになるんじゃない、それぞれ好みがあるんです! 個人的には、白川さんの怒った表情がいいなあと。いわゆる美少女ってわけじゃないですが、こういう女性、私的には全然ありです!(笑)
女性だったら、一途な伊賀くんきっと応援したくなりますよ。男女ともに楽しめる作品です。全3巻なので、すぐ集められますしね。
ちなみに、伊賀くんが務めるレンタル屋のモデルは、TSUTAYA府中店だと言われています。本作を読んだあと、聖地巡礼してみてはいかがでしょうか。
『彼女とカメラと彼女の季節』月子
『彼女とカメラと彼女の季節』第5巻
月子 講談社 \552+税
(2014年9月22日発売)
第1話を読んで、心をグッとつかまれました。第1巻発売時に「単なる百合マンガじゃありません!」というポップを作ったんですが、まさにそうなりましたね!
百合要素もあるんですが、男性が登場して三角関係になったりと、普通に恋愛マンガとして楽しめます。
カメラ好きの方にもおすすめのマンガです。
二眼レフをはじめとして、いろいろなカメラが登場してくるのが楽しいですよね。なかには、Canonの『EOS(イオス)』というオートフォーカスの一眼レフカメラを使っていたユキが、最後の場面では『F-1』というマニュアルカメラに持ちかえている、なんてこだわりも……。
その意味はカメラ好きが読めばピンとくると思います。
百合、恋愛、カメラと、いろんな要素がつまっているので、幅広い層に売れたんだと思います。
『先生の白い嘘』鳥飼茜
『先生の白い嘘』第2巻
鳥飼茜 講談社 \562+税
(2014年9月22日発売)
掲載誌が男性向けの月刊「モーニング・ツー」なので、男性客が手に取る機会が多いんですが、ぜひ女性にも読んでいただきたい作品です。
『おんなのいえ』で鳥飼茜先生のファンになった方は、読んだら衝撃を受けると思いますよ。
最近、千葉県で13歳の女子中学生を強姦したとして起訴された男性が、逆転無罪となったニュースがありましたよね。被害者との間に合意があった可能性を否定できないという理由でした。この判決が想定している「13歳の少女の性に対する認識」というものに対する違和感。
そんな違和感が、このマンガの作中にも共有されていると感じました。性に対して真正面から向き合っている作品なんです。
巻末には、萩尾望都先生による作品解説……というか、フェミニズム宣言ともいえるメッセージがあります。萩尾先生の社会に対する怒りがもう大爆発ですよ! 読んだあと、いろいろと考えされられました。みなさんもぜひ読んでみてください。
『星の案内人』上村五十鈴
『星の案内人』第2巻
上村五十鈴 芳文社 \590+税
(2014年8月16日発売)
本作の舞台は、おじいさんがひとりで営む、手作りプラネタリウム。このプラネタリウムには、様々な事情を抱えた客が訪れます。ほっこりしたお話なので、幅広い層に受け入れられる作品だと思います。
今の子供たちって逃げ場がないんじゃないかなと思うんですよ。昔は秘密基地とか作れたんですけど、今は難しいですよね。本作に登場するプラネタリウムみたいな、心の置場みたいなものがあればいいなあと。
幅広い年齢の方が楽しめる作品ではありますが、もっと若い世代の方たちに知ってほしいですね。仕事やプライベートで何か悩んだり、ストレスが溜まったら、このマンガを読むことをおすすめします。
もちろん、星好きの人にもおすすめです。星座の解説なども載っていますしね。プラネタリウムという着眼点は、今まであまりなかったと思うんです。新鮮でしたね。
1コマ1コマの夜空の絵にすごく手間がかかっているので、そこにも注目してほしいです。
本作を含め、青年誌や、日本文芸社などが刊行している男性誌に連載しているマンガで、女性にもおすすめできそうな作品は、女性向けのマンガと同じ棚に置いています。そうすることで、女性がこういったマンガを手に取る機会が少しでも増えればと。
ほかに、「別冊漫画ゴラク」で連載されている『ラブラブエイリアン』なども女性におすすめです。
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