365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月12日はドイツが満州国を承認した日。本日読むべきマンガは……。
『木島日記』上巻
大塚英志(作) 森美夏(画) KADOKAWA ¥700+税
満州。国とは名ばかりのこの傀儡国家を巡り、日本は国連を脱退し、アジア・太平洋戦争へと突き進んでいくことになる。
1938年の本日、5月12日、ドイツがこの満州国を独立国として承認した日である。
そんな本日紹介したいのは大塚英志・原作、森夏美・作画の『木島日記』。
舞台は戦争の狂気に日本がむしばまれつつある昭和初期、2.26事件後の物語。
民俗学者・折口信夫は、仮面の古本屋店主・木島平八との出会いをきっかけにして、正史の裏に隠されたもうひとつの歴史を目撃することとなる。
イデオ・サヴァン症の天才児たちを連結した人間コンピュータによる対米戦予測、戦艦「大和」の不沈の要となる生け贄・持衰(じさい)、南朝の真の天皇と日本で死んだキリストとロンギヌスの槍、そしてヒトラーの出生の秘密とユダヤ人満州移住計画……荒唐無稽な題材でありながら、膨大なウンチクをもとに展開されるそれらの「偽史」は、「もしかしたら……」と思わせるだけの説得力をもっている。
日本と大陸を行き来しつつ語られる、妖しい魅惑に満ちた「あってはらない歴史」の世界にどっぷりつかってみてほしい。
なお本作の姉妹編として、民俗学者・柳田国男が重要人物として登場する『北神伝綺』、おなじくラフカディオ=ハーンこと小泉八雲を描く『八雲百怪』が同じ、大塚・森コンビによって描かれているので、こちらもあわせてどうぞ。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas