365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月20日はローマ字の日。本日読むべきマンガは……。
『ふしぎの国のバード』第1巻
佐々大河 KADOKAWA ¥620+税
5月20日がローマ字の日となったのは、1955年のこと。
ローマ字といえば、現在も使われ、私たちが一番なじんでいる「ヘボン式」が有名だ。
ジェームス・ヘボンは初の和英辞典である「和英語林集成」を編纂したが、その際の日本語表記をもとにしてヘボン式ローマ字は作られている。
さて、ではこのヘボン氏が登場するマンガをご紹介しよう。
時は明治初頭。冒険家イザベラ・バードが日本を旅した道中を、生き生きと描きだした『ふしぎの国のバード』がそれである。
イギリス生まれの、当時では珍しい女性冒険家のイザベラ・バード。
彼女にとっての日本はまさに前代未聞、見ること聞くこと何もかもが珍しい「ふしぎの国」。
彼女の目的地は蝦夷。東京を出立して、だれもたどらなかった西海岸ルートを進んでアイヌに会うという、当時としては無謀とも言える冒険。
お供にするのは通訳の伊藤鶴吉ただひとり(この鶴吉がじつにいい仕事をする)。
彼女が旅のなかで目にする驚きや喜びは、マンガを通してあざやかに浮かび上がってくる。 読んでいて本当にワクワクしてしまう傑作なのだ。
ヘボン氏が登場するのは第1話「横浜」。通訳の伊藤に会うまでのストーリーだ。
日本に住む西洋人の最長老である彼はバードの通訳選びに協力し、旅立ちの時には「笠」をプレゼントしてくれるという、なかなか心憎い役どころだ。
さて本作を読むと、現代日本と江戸とのあまりの乖離に呆然とさせられる。
マンガの舞台は明治の始めで、江戸から明治というと、日本がもっとも大きく変わった時だろう。
幕末の混乱があり、大政奉還ののちに、一気に近代化が進められた時代だ。
その是非はさておき、江戸というひとつの文化が明らかに滅びたという事実を、マンガのかたちでわかりやすく提示してくれる作品があることに、心から感謝したく思う。
加えて今日はぜひとも、ローマ字の存在にも感謝したいところだ。
日本語と外国語の間をつないでくれているローマ字は、異文化もまたつなげてくれるものだから。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」