日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『新装版 LUNO』
『新装版 LUNO』
冬目景 講談社 ¥1,200+税
(2016年4月22日発売)
青年誌をメインに活躍する冬目景が少年誌で連載した唯一の作品『LUNO』。長らく入手困難な状況が続いていたが、2014年には電子書籍化。今回は雑誌と同サイズのB5サイズの新装版として刊行されることとなった。
ヨーロッパの片田舎で暮らす少年・ティートはある日、ジータと名乗る異国の少女と出会う。彼女の両親は、かつて存在した死者を蘇らせる力を持つ一族・モサの民を研究しており、それがもとである教団に殺され、ジータ自身も追われる身だという。ティートもまた父と姉を続けて亡くしており、近しいものを亡くしたもの同士、2人は距離を縮めていく。
異国の少女、死者を蘇らせる力、なぞの教団というキーワードからは、いかにも少年誌といった冒険活劇やボーイ・ミーツ・ガールを想像する人もいるだろう。たしかに教団との研究をめぐる攻防はストーリーの軸ではあるが、作品全体をとおして描かれているのは死、そして命のありかたという重たいテーマだ。
死を受けいれることで少しずつ大人になっていくティートとジータの姿が、冬目景の乾いた描線で淡々と描かれていく。
しかし、いつだって女の子は、男の子を置き去りに大人になってしまう。物語中盤、凶弾に倒れるも、モサの民の力で蘇るジータ。しかし彼女は睡眠も食事も必要とせず、歳も重ねることのできない体となっていた。
一度は訪れた死を受けいれ土に還ることを望むジータと、彼女ととも生きることを望むティート。2人で登っていたはずの大人への階段を、自身の死を受けいれることでジータは一気に駆け上ってしまった。
「LUNO」とはエスペラント語で月のことだ。追いかけてもけっして追いつくことのできない月のように、少女は少年にとっての永遠になったのだ。
<文・籠生堅太>
なんでも屋。イリーガルなお仕事以外は、だいたいなんでもやります。読むと元気になれるマンガが好きです。
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