日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『渡くんのxxが崩壊寸前』
『渡くんのxxが崩壊寸前』第1巻
鳴見なる 講談社 ¥620+税
(2016年5月6日発売)
少女は幼いころ、少年が大切に作っていた畑を壊滅させた。
高校生になってから、彼女のせいで住んでいる家を追い出されそうになった。
気づいたら、彼女にいつも付きまとわれている。
このマンガの体裁はラブコメだが、コメディというにはシチュエーションがあまりにも重く、いわくありげなシーンが多すぎる。
『ラーメン大好き小泉さん』の著者が描く長編作品。
以前角川コミックス・エースから出ていた第1巻が、連載の移籍によって講談社から再発売されたもの。6月17日には第2巻が発売される。
角川版との違いは著者がブログで正式に発表している。
紗月は高2になってから現れた。後ろから「直くん 直くん 直くん 直くん」と呼びながら追いかけてくる。唐突にキスをしてくる。
少女の奇行は確かにビクッとする。
だが直人が一番怯えているのは、紗月が自分の知らない何かを隠していることだ。
みんな自分に嘘をついていて、自分だけ何も知らないのではないか?
鍵になるのは妹の存在だ。
直人はとても妹を大事にし、妹も直人のことを大好き、だと思っていた。
ところが紗月が現れてから、信じていた妹があることで嘘をついていたことを知り、ショックを受ける。
前半で描かれる「妹と2人で過ごす幸せな生活」は、後半からボロボロと崩れていく。
自分の生活が少女に侵略されるのはハラハラする。
だがそれ以上に、兄妹の関係の変化を彼は怖がっている。
紗月は直人たち兄妹の殻をぶちやぶる存在。成長の痛みの権化だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」