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『本 死にたまふこと勿れ : 夏目文彦青春日記』第1巻 村山漠地【日刊マンガガイド】

2016/05/31


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『本 死にたまふこと勿れ : 夏目文彦青春日記』


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『本 死にたまふこと勿れ : 夏目文彦青春日記』第1巻
村山漠地 新潮社 ¥580+税
(2016年5月9日発売)


彗星のごとく現れた村山漠地(むらやま・ばくち)の記念すべき初コミックス。
村山はコミックシティ(同人誌即売会)に参加した「月刊コミック@バンチ」出張編集部に持ち込みをしたことで発掘され、連載を獲得した期待の新人だ。

与謝野晶子の反戦歌「君死にたまふことなかれ」を拝借したタイトルが印象的だが、ずばりテーマは“本への愛”。本(とりわけ純文学)が大好きな高校2年生の夏目文彦が、衰退していく出版業界を憂い、潰れていく街の本屋に心を痛め、ページを繰る音が聴こえない電子書籍に寂寥感を抱き、まったく本を読まない老若男女に嘆きまくる。

読書を忘れた現代人なんて滅亡するがいいのだァ――――!!!!(夏目文彦)

人類の宝であるはずの読書活動を放棄し、スマホに視線を落とし続ける平成20年代後半の日本。「三度の飯より読書が好き」、どころか、「読書そのものが三度の飯」である夏目にとって、これは由々しき事態だ。彼は小説家になってメガヒットを飛ばし、出版業界の救世主になることを決意する。

……とまぁ、大風呂敷を広げたものの、デジタルネイティブの同級生たちから見れば、夏目なんぞブレザーが制服の高校に学ラン学帽で登校し、常に「本を買え~」「本を読め~」とボヤき続けている変わり者にすぎない。はたして夏目は読書の楽しさを周囲に啓蒙し、自らも小説家として大成することができるのだろうか?

とりあえず、授業前に読書の時間を設けることを提案したり、閉店が決まっていた行きつけの尾羽田(オワタ)書店を立て直したり……。世の中にカツを入れつつ、空回りしつつも、できることからコツコツと始めた夏目の奮闘に期待!



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てライター。5月14日公開の映画『殿、利息でござる!』の劇場用プログラムに参加しております。
観てね!

単行本情報

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