365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月1日は小田急電鉄が発足した日。本日読むべきマンガは……。
『鉄道少女漫画』
中村明日美子 白泉社 ¥714+税
「小田急線」といえば、なにが思い浮かぶだろうか?
新宿発、乗降客が多い、なんといってもロマンスカー?
小田原線、江ノ島線、多摩線と、高級住宅街や郊外のベッドタウンを走り、さらに箱根方面まで乗り入れ、観光地までつないでいるバラエティ豊かな路線といえる。
小田急線を走らせている小田急電鉄株式会社の歴史をひもとくと、1923年5月に前身の「小田原急行鉄道株式会社」が創立され、金融恐慌などの苦境を経ながらも、1941年3月1日には親会社の鬼怒川水力電気株式会社に合併し、この時に社名を「小田急電鉄株式会社」としている。
さらに、1942年には大規模な合併により「東京急行電鉄株式会社」と改称し、東京西南部を統べる私鉄の一翼となっていた。
戦後の1948年6月1日、旧小田急電鉄は東京急行電鉄からほかの私鉄と同様に分離独立することとなり、あらためて小田急電鉄株式会社として発足し、発展をとげて今に至るというわけだ。
記念すべき設立の日である本日は、その小田急線を舞台にし、「少女漫画」と銘打った繊細な作品を取りあげたい。
『同級生』シリーズほか、BLや少女向け作品で絶大な人気を誇る中村明日美子による、恋愛をメインとした人間ドラマを描きだすオムニバスストーリーだ。
もちろんロマンスカーなど特徴的な電車や、駅のホームや模型など、あらゆる形で小田急線の魅力が描きあらわされている。
著者は小田急線への深い愛をあとがきでも記しており、その愛の深さは駅の特色や路線、ダイヤなどまでもドラマにしっかり組みこまれていることでよくわかる。
葛藤を抱えて揺れていたり、激しい争いの挙句に飛び乗ったり……などなど一筋縄ではいかない恋愛模様が、小田急線を乗り降りするたくさんの人々の息遣いや旅情とあいまって、しっとりと味わえる。
駅員さんの活躍ぶりにもご注目。
読むとケーキ屋に行きたくなる「木曜日のサバラン」からのスピンアウト『君曜日』も展開しているので、少女マンガにキュンとしたい人はこちらへのお乗り継ぎもどうぞ。
<文・和智永 妙>
『このマンガがすごい!』本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。