365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月3日は“走る爆弾娘”が逮捕された日。本日読むべきマンガは……。
『タムのなんでもカプセル6 MADONNAに告ぐ』
田村由美 小学館 \400+税
2012年6月3日、オウム真理教の元信者・菊地直子容疑者が相模原市の潜伏先で逮捕された。
菊地は高校時代に陸上部に所属し、オウムのスポーツクラブでも様々なマラソン大会に参加。1994年の大阪国際女子マラソンでは3時間7分40秒の自己ベストを記録した。
翌年の地下鉄サリン事件後、菊地は上九一色村にあった教団施設から、八王子のアジトに爆発物の原料を運搬した容疑で特別指名手配される。
マスコミは陸上競技と爆弾原料の運搬をかけて、菊地のことを“走る爆弾娘”と呼んだ。
次々に事件の中心人物が逮捕されていくなか、この印象的な異名を持つ菊地だけは、いつまでたっても捕まらなかった。だからして事件が風化しかけた17年後に、突然、菊地が姿を現したことは衝撃的だった。
しかしながら「彼女は教団の幹部ではなく、ただ上からの命令に従っていただけでテロ計画や危険物製造を認識していたとは認められない」として、2015年11月に無罪になっている。
無罪を主張するなら、17年も逃亡生活を続けず、さっさと出頭すればいいだけの話だが、日本全国に自分の顔写真が貼りだされ、“走る爆弾娘”などという異名までつけられて指名手配されたら、そう簡単には出てこれないという心情もわかる。
のちに菊地は月刊「創」に寄せた手記でこう語っている。「警察につかまれば暴力をふるわれてでも嘘の自白をさせられると思っていた」。
てなわけで、きょう紹介するマンガは1992年に刊行された田村由美の短編集『MADONNAに告ぐ』の表題作だ。
主人公の水沢かれんは、16歳の誕生日を迎えた。
そんなおめでたい日に目の前で起こった凄惨な爆破事件。
機密事項を知る義父の口を、警察が封じたのだ。そして死に際の義父から、かれんは自分の体内に時限爆弾が埋めこまれていることを聞く――。
さすがは『BASARA』、『7SEEDS』 の田村由美。短編でもスケールがデカい!
間一髪でかれんを救い出したBOYとKIDSのイケメンタッグも人間爆弾仲間。3人は、かれんの義父が最期に言い残した唯一の希望を頼りに、警察と真っ向勝負を繰り広げる。
終盤、BOYが買って出た捨て身の援護を受け、目的地までイッキに駆けぬけるかれんの姿は、文字通り“走る爆弾娘”だ。
スピード感あふれる怒涛の展開、かれんが得意の弓道で立ち向かう華麗なバトル、絶体絶命のピンチを乗り切る驚きのアイデア、数々の粋なセリフまわし。
「これぞマンガだ!」と拍手喝采の極上エンタメである。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てライター。5月14日公開の映画『殿、利息でござる!』の劇場用プログラムに参加しております。
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