日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『新 仮面ライダーSPIRITS』
『新 仮面ライダーSPIRITS』第13巻
石ノ森章太郎(作)村枝賢一(画) 講談社 ¥571+税
(2016年5月17日発売)
赤と緑のペンダントが交差し、新旧少年仮面ライダー隊の邂逅から始まる本巻の読みどころは、仮面ライダーV3の帰還、復活劇につきる。
旧『仮面ライダーSPIRITS』の四国・月面篇にて、強敵との連戦に継ぐ連戦による消耗、さらには禁断の最終兵器「V3火柱キック」の使用によって、V3への変身能力を失った風見志郎。
BADANとの全面戦争が激化し続けるなか、変身不能というあまりに重いハンディキャップを背負わされる展開となったが、同時に仮面ライダーファンの心中には、実現しなかった幻の企画「帰ってきたV3」を再現するためへの布石なのではないかという期待が生まれた。
その予感は、前線を離れる結城丈二=ライダーマンが志郎に自らの右腕であるカセットアームを託したことで、確信に変わる。
そうしてマシンガンアームを片手に、生身のまま戦場を駆ける風見志郎の姿に待たされること、旧『SPIRITS』から、じつに10年あまり。
青白い閃光のなかから不死身の男、V3がついに帰ってくる、その時が来たのだ。
ジェットコンドルの人間体である暗黒大将軍の策謀によって、地下鉄構内に次々と集められたバダンシンドローム患者の群れを追い、単身敵地に乗り込む風見志郎。
人々を守るため変身不能のままおのが身を敵陣にさらし、蛇女との因縁の再戦に臨み、機転をきかせて善戦するも、やはり追いつめられる生身の肉体。珠姉弟(純子・シゲル)と志郎の再会、V3=風見志郎という正体の暴露といった、テレビシリーズのファンにとってメモリアルなトピックも、物語を彩る。
乱入した鋼鉄参謀と蛇女の同士討ち、それに困りはてる暗黒大将軍といった怒濤の展開の末、ついに始まるジェットコンドルの音速の衝撃波による大量虐殺計画。
間一髪で加速するジェットコンドルにロープアームで追いすがるも、なすすべなく、あまりに弱く無力な自分に絶望し嘆く、風見志郎。『SPIRITS』では終始クールな人物像を貫いてきた彼が、ジェットコンドルに向けて「やめろ」「やめてくれ」と感情むきだしで絶叫する様は、壮絶で胸を打たれる。
それでもなお、不屈の闘志を絶やさぬ彼の前に、けたたましいエンジン音とともに駆けつけたのは、1号・2号のダブルライダー。
力と技、互いの変身ベルト・タイフーンを、志郎のダブルタイフーンに接続。
ライダーダブルパワーで強制キックスタートさせるという豪胆な方法で、息を吹き返すダブルタイフーン。
ダブルライダーが吠え、体が変わるぞ青クリア!
目を覚ませダブルタイフーン!! そして帰ってこい!! 仮面ライダーV3!!
さて、一世一大の大計画を、V3復活劇の体のいい演出装置にされてしまった、暗黒大将軍ことジェットコンドル。
最後のデルザー軍団(ジェットコンドルも「帰ってきたV3」と同様、映像作品には登場しない、設定のみ残されていたキャラクターだ)としての登場は華々しかったものの、以降はまったくロクな目に遭わず、ZXにボコられ、ダブルライダーに落とされ、今また帰ってきたV3のウォーミングアップ相手にされそうという、さんざんな役回りの彼が不憫でならない。
かつて音速を誇ったジェットコンドルの翼は、もはやシゲルの放った伝書鳩にすら追いつけないというありさまで、村枝先生は彼になにか恨みでもあるのだろうかと疑いたくなる。
やはり暗黒大将軍の、変な一人称がよくなかったのだろうか。
巻末で帰ってきたV3に頭蓋を砕かれそうになっている、ジェットコンドルの明日はどっちだ!
<文・床山皇帝>
オリジナル怪獣ソフビ製作「カイザープロ」代表。床ニスト。
ブログ「カイザー怪獣名鑑。」