365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月12日は日記の日。本日読むべきマンガは……。
『未来日記』第1巻
えすのサカエ KADOKAWA ¥540+税
1942年6月12日、ナチスの迫害を逃れオランダ・アムステルダム市プリンセンフラハト通り263番地の隠れ家に潜伏していたポーランド系ユダヤ人の少女アンネ・フランクは、13回目の自分の誕生日プレゼントとして父・オットーから赤と白のチェック模様が入った表紙のかわいらしいサイン帳をもらった。
アンネはこのサイン帳を日記帳にしようと、この当日に最初の日記をつけた。
のちに『アンネの日記』として世界的に知られることになる日記の執筆が、こうして始まったことによってきょうは「日記の日」となった。
日記をテーマにしたマンガで有名なのは、アニメ化もされたえすのサカエの『未来日記』だ。
周囲に関わらない「傍観者」として、見聞きしたものごとを携帯電話の日記につけていた中学2年生の少年・天野雪輝(あまの・ゆきてる)はある日、自分がまだ体験していないはずの「未来」が日記に書かれたことを知る。
これは雪輝の空想のなかの神「デウス・エクス・マキナ」が引き起こしたことで、彼はこの世界に自分と同様「未来日記」を持つ人間がほかに11人いることと、自分たちがデウスの後継をかけたバトルロワイアルに参加させられていると知らされる。
日記を破壊された者はこの世から消滅する……雪輝は序盤の日記所有者との戦いで、その事実を目の当たりにした。
と同時に、自分の日記は傍観者がとりとめもなく書き記した「無差別日記」で、未来の彼自身については何も書かれないことに気づき、絶望する――。
一見役に立たない未来日記だが、雪輝はクラスメイトの我妻由乃(がさい・ゆの)が偏執的に綴った「雪輝日記」を持ち、なおかつ第2の未来日記所有者であることから、自分のストーカーとの協力を余儀なくされるという展開が秀逸。
そのほかの未来日記も、刑事・来須圭悟の「捜査日記」(相手の犯行を予知する)やテロリスト・雨流(うりゅう)みねねの「逃亡日記」(安全な逃走経路を予知する)など、それぞれの所有者に特化したもので、これが戦ううえでメリットにもデメリットにもなりうる点もおもしろい。
日記をつけているデバイスがスマホではなく携帯電話だったりと、十年ひと昔を感じさせる要素はあるものの、全体的な構成は秀逸で、ややコミュ障ぎみだった雪輝の成長物語という側面を持つことも好感が持てる。
未読の諸兄にはぜひともご一読をおすすめしたい。
<文・富士見大>
編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わる、動物メカ愛好家。『別冊宝島2394 仮面ライダー』や、ただいま絶賛発売中の『別冊宝島 「仮面ライダー」伝説の10人ライダー総特集』にも参加しています。