日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『吾輩の部屋である』
『吾輩の部屋である』第2巻
田岡りき 小学館 ¥552+税
(2016年6月10日発売)
主人公と、ひとり暮らしの部屋の家具しか出てこないお部屋コメディ、第2巻。
鍵山哲郎くんは大学工学部の院生で、けっしてひきこもりってわけじゃないんだけどコミュニケーション能力にはちょい難アリ? 遊び相手は高校時代からの友人・吉田くん(姿は出てきません)しかいない様子。
同じゼミの植村さん(姿は出てきません)に片想いしていて、それなりにアプローチはしているけど、あんまり進展はなさそうで。
てゆーか哲郎くん、相手どうこうよりも、自分の言動がどう思われるかをいちいち長考しすぎ……というのが本作でみっちり描きこまれ、笑いを誘うポイントなのだ。
哲郎のひとりごとしか聞こえない静かな部屋で、人知れずツッコミを入れるのはささやかな家具たち。論理的思考のもとに選択した(はずの)ちょっとズレてる哲郎の行動を背後から見守る炊飯器、洗濯機、天井からぶら下がる電器たちがなんだか優しく見えてくる!?
部屋こそは、自分の一挙手一投足をぜーんぶ知ってる運命共同体。
そんな概念を与えてくれもする、じつはなかなか深い作品だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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