日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『29歳独身中堅冒険者の日常』
『29歳独身中堅冒険者の日常』 第1巻
奈良一平 講談社 ¥429+税
(2016年6月9日発売)
「29歳」。20歳前半ほど無謀にはなれないし、思いつきで行動もできない。でも「責任」は大きくなっている年齢。
アラフォーではない。みんなの責任を引き受けるほど円熟しきるには日が浅い。まだまだ「若い」と言われる年代。
主人公の29歳、シノノメハジメは冒険者。村の酒場やギルドに、魔物の肉をとっておろすお仕事。
彼がいないと村は成り立たない。みんなの役に立つことで、彼には居場所がある。
そんな彼がダンジョンに入った際に出会っちゃったのが、孤児の少女リルイだった。
彼女は別に「養ってほしい」とは言ってない。
ハジメに助けてもらって、慕ってはいるけれど、ひとりで生きていくつもりは満々だ。
さあ29歳。こんな時どうする?
10代だったら、まだ「引き受けられない」と考えるはず。
しかし29歳だったら、育てることは無理ではない。無視したら、良心の呵責は生きてきたぶん重い。
父親になりきれない独身男性の、少女引き受け日記。
舞台をファンタジーにすることで、孤児の境遇のヘヴィーさをやわらげているさじ加減がうまい。
ハジメの行きつけの、娼館経営者のサキュバスが、ある特殊な理由でリルイをもらいたいというシーンがある。
これ現実だと
「サラリーマン男性がよく通うソープの経営者から、彼が拾った孤児の女の子を、うちで働かせないかと言われた」
ということなわけで。
「幼い女の子と、ツンデレ大人男性」の組みあわせが好きな人にはオススメ。
一生懸命な幼児リルイは、とってもキュート。
同じくらい、不器用で素直になれないハジメが、とにかくかわいいです。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」