日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『オレが腐女子でアイツが百合オタで』
『オレが腐女子でアイツが百合オタで』 第1巻
アジイチ KADOKAWA ¥600+税
(2016年6月23日発売)
腐女子少女の保科美鶴(ほしな・みつる)は、超アッパー系BL好き女子。
マシンガントークでキャラ萌えを語り、学校で男子たちの仲のよさを見てはよだれを垂らして妄想する。クラス委員で漫研部長と、目立つことをいっさい辞さない。
一方、百合オタ男子の吉田玲時(よしだ・れいじ)は「自分を含めた男不要、女の子だけの世界こそ至上、尊い!」というめんどうくさい系。コミュニケーション力は壊滅的になく、オタクであることはひた隠しにしている。
そんな2人の心と身体が入れ替わった。
となると、問題は「キャー私の身体見ないでよー!」とかいうレベルの問題ではない。
特に吉田。自分の身体が女の子であることに、極端に「申し訳なさ」を感じ始める。
女子を神聖化しすぎるあまり、「男(オレ)という存在は女子に近づくべきじゃねぇんだよぉぉぉ!!」と嘆き散らす。
吉田は「百合」という幻想がすぎるゆえに、女子の個をまったく見ていない。
「女性」という枠を重視しすぎる思考は、マンガ『百合男子』の考え方とも似た、二次元を現実に当てはめてごっちゃにする時に陥るワナだ。
一方で保科は、男子に近寄れる状況を楽しみつつ、適度に周囲に迷惑をかけないように、うまく暮らしている。
何もかもオープンにして、後ろめたさをいっさい持っていない彼女は、現実と二次元の切り離し方がうまい。
腐女子か百合好きか、男子か女子か、という部分よりも、自分は人をどう見ているのか、というコミュニケーションの根本的な問題に踏みこんでいきそうだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」