『さよならソルシエ』第2巻
穗積 小学館 463
「ひまわり」「星月夜」「カラスのいる麦畑」……だれもがその作品を見たことがあるだろうフィンセント・ファン・ゴッホがピストル自殺を遂げたのは、1890年7月27日のことである。享年37歳。
貧苦にあえぎながら作品を描きつづけ、少しずつ評価されるようになってきた矢先の、衝撃的な最期であった。
ゴッホといえば、エキセントリックな性格で、自ら耳たぶをナイフで切り落としたエピソードも有名だ。その生涯には謎が多く、自殺の原因についても、はっきりしたことはわかっていないといわれる。
生前は無名に等しかった彼を支え続けたのは、実弟のテオである。画商であったテオは、兄の才能を信じ、精神的にも経済的にもバックアップしていたという。
『さよならソルシエ』は、テオを主軸に据え、フィンセント・ファン・ゴッホの死までを描いた物語。
史実を踏まえながらも、作者独自の解釈が盛りこまれ、斬新なゴッホ像に出会うことができる。
フィンセントが「絵を描くことだけに情熱を傾ける、浮世離れした変わり者」なのは、おそらく一般的なイメージどおりだが、穏やかで邪気のないキャラとして描かれるのは、なかなか新鮮だ。
一方のテオは、見るからに切れ者の、抜け目ない策略家で……そして兄を想うために“だれも考えつきもしないようなこと”をやってのける。
『このマンガがすごい!2013』の「オンナ編」で、第1位を獲得した本作。驚愕のラストにどんな感慨を抱くかは、人それぞれのようだ。
著者初の連載作にして、大胆不敵な野心作である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」