日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『すわっぷ⇔すわっぷ』
『すわっぷ⇔すわっぷ』第1巻
とめきち 芳文社 ¥819+税
(2015年11月27日発売)
キスをすることで精神が入れかわる。
フィクションにおいて、入れかわり設定じたいはありふれたものだろう。
だから問題となるのは、その設定のうえでどんなアクロバティックなドラマをつむぐかということだ。
その点で、かつて吉河美希の『山田くんの7人の魔女』を読んだときは本当に驚かされた。
ここはその詳細を語る場ではないので控えるが、あの貞操観念の独創的としかいいようのないあり方に衝撃を受けた読者は、筆者以外にも少なくなかったはずだ。
「まんがタイムきららキャラット」で連載中の『すわっぷ⇔すわっぷ』は、その系譜に連なるだろうキス入れかわりものだが、ここではそれを『きらら』のフォーマット上で展開する。
つまりここで執拗に描かれるのは、女の子どうしのキスであり、キスが求められるのも日常のささやかな出来事、たとえば追試のためだったり、アレルギー持ちがネコに触るためだったり、バイキングで2倍食べるためだったりする。
そしてそれらをめぐり、1話8ページのなかにおいて、毎話必ずキスシーンが描かれ、そのバリエーションの多様性で魅せる。つまりキスを交わすのが、トイレであったり、人前であったり、水中であったりするわけだ。
その点で本作の真価が問われるのは、一般的なキスのシチュエーションが出つくしたその後だろう。
第2巻以降の展開(と女の子どうしのキス描写)に、まだまだ目が離せない。
<文・高瀬司>
批評ZINE『Merca』(アニメルカ×マンガルカ×ジャズメルカ)主宰。アニメ/マンガ論を『ユリイカ』などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
TwitterID:@ill_critique
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