話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『orange』
『orange』第5巻
高野苺 双葉社 ¥620+税
(2015年11月12日発売)
10年後の、自分からの手紙。
大切な人を守りたいという心からの願いが、未来と現在を結びつける――。
心に響く友情と純愛を描いた『orange』が、ついに完結を迎えた。
丁寧に積み重ねたエピソードが感動的で、巻を追うごとに人気を増し、メディアミックスも行われている話題の作品だ。
物語の舞台は長野。自然の美しいところだ。
主人公は控えめで奥手、他人に気を遣いすぎる性格の少女、高宮菜穂(たかみや・なほ)。
彼女には仲間がいる。女子はクールな茅野貴子(ちの・たかこ)、人なつこいムードメーカーの村坂(むらさか)あずさ。
男子は、明るい性格でサッカー好きな須和弘人(すわ・ひろと)、つかみどころのない眼鏡男子・萩田朔(はぎた・さく)。
そして高2の春このグループに加わることになった、東京からの転入生、成瀬翔(なるせ・かける)。
翔が転入してきた始業式の日、菜穂に届いた手紙からストーリーは始まる。
それは未来の自分自身からで、10年後には翔はいない、と記されていた。
手紙には菜穂と仲間たちの日常がそのまま記されていて、読めば読むほどに信じざるをえない。
さらに手紙には、翔を失いたくない、後悔したくないから、どうかこうしてほしい――といくつもの要望と、とるべき行動が書かれていた。
翔は菜穂たちの仲間となり、その親密さは日に日に増していく。
戸惑いながらも、菜穂は手紙の要望に従い始める。
行動を変えたせいなのか、徐々にに手紙の記述と、菜穂たちの日常がずれ始めていく――。
菜穂も翔も、最初の日からお互いが気になっていたが、やがて想いを認めて告白。
つきあうことこそないけれど、好意を認めあった関係になっていた。
だからこそ、決して翔を失いたくない、その思いがつのる。
未来を、絶対に変える。仲間たちの支えを得て、あらためて心に誓うのだった。