直前の第4巻で、未来とは流れが変わったことを知らせる重要なイベントである体育祭が終了。
秋が終わり、冬がやってきていた。
手紙によれば、大晦日に菜穂は翔とケンカをしてしまい、須和から告白されるとあるが……。
そして大晦日、雪の降るなかで、やはり菜穂は翔と行き違い、別れ別れになる。
ひとりになった菜穂のところへやってきた須和は――。
須和の言葉に勇気づけられ、菜穂は翔を探す。
しかし翔の姿はなく、連絡も取れなかった。
次の話では一転、未来の菜穂たちの世界にいた、今は消えてしまった翔目線のストーリーになる。
ここで、翔の心に深く根ざした闇を、私たちは見せつけられることになる。
一方、翔が存在している高校時代では、年が明けても翔と菜穂の距離は戻っていなかった。
翔のいない未来へと場面は変わり、春。
翔と来たかった桜咲く弘法山で、過去に戻れないかと画策する5人。
せめて手紙だけ送ろう、もう翔と会えないなら、パラレルワールドでもいいから翔を救おうと決める。
ついに、運命の日――翔がいなくなるその日がやってくる。
未来からの手紙に記された時刻が刻々と近づく。そこで、菜穂たち5人がとった行動とは……?
ごく普通の生活のなかで、すぐそばにいる仲間たち。
当たり前のように存在しているものの真の大切さを、丁寧に、きめ細やかに描き出した最終巻。
この巻では表情の描き方が特にすばらしく、キャラクターの想いが手にとるようにわかり、それがいっそう感動を盛りあげてくれる。
ひとコマひとコマにこめられた誠実さ、真摯さ。
それを受けとめた読者たちによって、末永く愛される作品となることは間違いないだろう。
後悔をしたことのない人間は、おそらくだれもいないと思う。
そして後悔は、人の心に一番重くのしかかって離れないもの。
だれもが、過去をどうにかできたなら――そう願うことが一度や二度はあるはずだ。
菜穂たち仲間全員が、それを願いだけに留めなかった。ポイントはここだ。
手紙を出し、記した。「後悔したくない」と何度も繰りかえして。
行動し、働きかけた。どんな希望であっても、信じて。
その強い想いが、大人になった彼らをも動かした。
その結果が、自分には決して確認できないことであってもよかった――ただ、できるだけのことをした。
それこそが、本当に大事なことなのだろう。私たちの日常でも、きっと。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」