日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『らんま1/2』
『らんま1/2』 第1巻
高橋留美子 小学館 ¥824+税
(2016年7月15日発売)
平成初期頃に一世を風靡した、高橋留美子のドタバタコメディがワイド版になって帰ってきた。
中国の伝説の修行場、呪泉郷での(うっかりした)荒行により、水をかぶると女になってしまう格闘少年・早乙女乱馬と、親同士が勝手に決めた婚約者である男嫌いな美少女・天童あかねのケンカ友だちのような関係が軸になる。
同じく呪泉郷で変身体質になってしまった者や、乱馬やあかねに思いを寄せる者たちを巻きこみ、格闘と騒動を繰り広げていくギャグ満載の作品だ。
アニメ化もされ、これもやはり大ヒットした。
第1巻の特筆すべき点は、天童あかねの「初期型」が見られることだ。
ヒロインらしいロングヘアに大きなリボン。これが、ある偶発的な事故を契機に、あかねはボブに近いショートヘアで定着する。
ボーイッシュな外見により、かえって素朴な女の子らしさがきわだつようになったが、長い髪を揺らしてじゃじゃ馬娘風のふるまいをするあかねは、この時にしか見られない貴重な姿なのだ。
また、東風先生の存在も見どころ。少年マンガに頻出する「温和そうだがじつは強い年長者」という魅力的なポジションで、あかねの初恋の相手でもあるが、乱馬登場以降、それを思い出す暇がなくなるほど騒がしくなるせいか、この頃が活躍のピークといえる。
個性豊かな登場人物たちのスペックがよくわかる乱馬格闘家列伝や、誕生秘話が語られる作者インタビューなど、おまけページも充実し、以降発売の各巻に収録されるとのこと。
世界的ヒット作『うる星やつら』のあとというプレッシャーのなかで世に出た『らんま1/2』だが、格闘描写の的確さやセリフのやり取りのおかしみには、すでに安定感があり、もちろん今でも変わらず楽しめる。
高橋留美子の天才性にあらためて驚嘆する。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。