日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『超人間要塞 ヒロシ戦記』
『超人間要塞 ヒロシ戦記』 第1巻
大間九郎(作) まつだこうた(画) 講談社 ¥590+税
(2016年7月22日発売)
バイト先の飲み会帰り、同僚の女の子から不意のキス。さぁ、どうする!?
こんな出だしの『ヒロシ戦記』、どこにでもいそうな若者たちの物語かと思ったら全然違った。
主人公かと思われたヒロシ、じつは人型宇宙戦艦! その内部にはスカベリア姫国なる異星人の国家が存在し、ヒロシの一挙一動を操っていたのだ。
『超人間要塞ヒロシ戦記』のタイトルがしめすように、本作は『超時空要塞マクロス』へのオマージュなのだろうか。
たしかにどちらも街を内包するほどの巨大宇宙戦艦を舞台に、異文化との出会いがまき起こす騒動を描いている。
とはいえ本作は日常のなんでもないできごとを、スカベリアの人々をとおしてオーバーに描くコメディなので、肩の力を抜いて楽しんでほしい。
たとえば冒頭の飲み会帰りのキスもスカベリアの民からすれば大事件。
なにせ恋人でもできようものなら、ヒロシが人でないと見破られる可能性がグンと高まってしまう。キスを回避できなかった責任を追求され、裁判にかけられる艦長。街は大統領の解任を求める民衆であふれかえる。
常識の通用しない相手、ここぞという場面で投入される新兵器、そして慢心が招く危機的状況など宇宙戦艦もののお約束をこれでもか! と盛りこんだ熱いドラマが展開されるが、結局はフリーター(になりすました宇宙戦艦)のバイト先でのなんてことない話。そのギャップについ笑いがこぼれてしまう。
合コンという超高難易度のイベントを目前に、物語は第2巻へとつづく。
コンビニ店員の「お弁当、温めますか?」に「寒くないので大丈夫です」と答えてしまうくらい、現代日本が理解できていないスカベリアの民の行動から目が離せない。
<文・籠生堅太>
フリーの編集者、ライター。読むと元気になれるマンガが好きです。
Twitter:@kagoiki