日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『百足 -ムカデ-』
『百足-ムカデ-』 第3巻
フクイタクミ 秋田書店 ¥429+税
(2016年8月8日発売)
戦乱の時代が終わりを告げ泰平の世に移りかわる頃、人々を脅かす噂があった。
月のない夜に人里を襲い、ひと晩ですべてを喰らい尽くす“百足(ムカデ)”。それは血に飢えた100人のならず者から成る殺戮集団だった。
村娘のお泉(いず)のあとを追った拳闘家・馬頭丸(ばとうまる)は、山中で“百足”の一番隊と遭遇し、1対100の血みどろの死闘が始まる。
絶対の不利をものともせず、次から次へと立ちはだかる相手をたたきつぶし、残る百足は38人! しかし、森のなかで助けた少女・お肋(ろく)がじつは百足五番隊のリーダーで、馬頭丸は左腕に致命傷を負ってしまう。村を目前にとらえた百足の進軍を、馬頭丸は阻止することができるのか……!?
壮絶なテンションのままつっ走る、ノンストップバイオレンスアクションの最終巻。
悪辣非道な百足を、殺して殺して殺しまくる馬頭丸。衰えることを知らぬ破竹の勢いで、ついにラストバトルへと突入!
手を変え品を変え奇妙奇天烈な技を繰りだす百足の面々がとぎれることなく現れ、あいかわらずすばらしき一発芸のつるべ打ち状態なのだ。よくぞ最後の最後までこのテンションとスピードを保ったまま結末にたどり着いた。
ベン髪のように頭部から伸ばした鎖の先に付いたカマを振るう男、長大なカラクリ細工の手足で挑む男、フクイタクミの傑作『ジョギリ屋ジョーがやって来る』を思わせる大バサミを持った男など、最終巻になってもまだまだ出てくる百足連中の濃さは色あせず。
とりわけイカレているのはバギーカーが「ギコガキゴ」の効果音とともにトランスフォ……形態変化して正体を現す大男。
さらに森の木々から頭が飛びでるほどの身の丈を誇る見た目まるっきりロボの百俔など、人間離れした百足も次々と立ちはだかって、あっという間に撃沈されていく。
馬頭丸が使う「百手無双」は相手の百手を読み、備える型。お肋の不意打ちで左腕に重傷を負った馬頭丸は、相手の百手を読んで――受けずに百手のその先を攻める自己流百手無双「百壱式」に開眼するのだ。
さらに、第3巻は今までよりも百足の女メンバーの活躍が目立つのもポイント。
それもこれも、心優しい馬頭丸が女に対して手心を加え、後まわしにしてきたため。
死体のパーツをつなぎあわせて作った人形を持ちはこぶ「オタサーの姫」みたいなお肋。
手足のようにオオカミを操るファザコン気味のオオカミ娘・芦姫(ろき)。
冒頭から馬頭丸をつけ狙っていた散黒(ちりくろ)、業桐(ごうきり)、死擂(しすり)の三人娘。
人間の限界を超える薬をドーピングして挑むかわいいもの好きなミニスカナース・斬呼(きりこ)。
監視・連絡を務める大人の魅力・岩長(いわなが)などなど、キューティーやらセクシーやらビューティーやらクールやらワイルドやらあらゆるタイプのバッドガールが選び放題! まぁ、みんな死んじゃうんだけど。
1、2巻同様、ほとんどのキャラクターがたった数コマの登場で消え去るが、だからこそそのインパクトは強烈!
「惜しい!」「もったいない!」と読んでるこちらは悶絶ものだが、その贅をつくしたおもてなしこそバトルアクションの満漢全席にふさわしい。
やがて迎える百足十番隊との最終対決で、馬頭丸が手にする思わぬ力とは何か!?
失速息切れいっさいナシ。たった一夜に濃縮された、血と肉と飛び散る汗と青春で彩られた大バトル花火大会、それが「百足」だ!!
ひと晩限りの1対100、いざ!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。