日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『彼女と彼女の猫』
『彼女と彼女の猫』
新海誠(作) 山口つばさ(画) 講談社 ¥600+税
(2016年8月23日発売)
チョビ――これが彼女の猫の名前だ。
チョビは彼女が好きだ。
だから彼が見つめる彼女はいつも美しく、みずみずしく、優しく、そして痛々しい。
春に拾われたチョビ。
その日からひとりと1匹の暮らしが始まり、チョビの目線を通じて、彼女との日常が紡がれていく。
社会人1年生として、一生懸命毎日の仕事に生きる彼女。
しかしときどきどうしようもなく息が詰まり、チョビはそんな彼女をただじっと見つめて――。
数々の名作アニメーションを生みだし、現在も映画『君の名は。』が大人気の新海誠監督。
彼の自主制作時代のデビュー作をもとに、この作品は生みだされた。
ちなみに本編はYouTubeにアップされているので、未見の方はこちらをどうぞ。
なおテレビアニメ版として放映されたオリジナルのショートアニメもあり、そちらの登場人物がマンガにも登場し、世界観をふくらませることにひと役かっている。
原作アニメーションはモノクロで、しかし不思議なくらい色彩を感じさせる印象的な作品だ。
そしてこのマンガもまた、それを彷彿させる質感と描写力にあふれている。
部屋着のキャミソール、湯上がりの髪、ポニーテールのシュシュ……魅力的な彼女。
脱ぎ散らかされた靴、複数のドリンク剤の空き瓶、床に倒れた椅子……胸に刺さる、日常の風景たち。
どんな小さなコマでさえ心の奥まで届く、訴求力の強い画面構成。
ゆっくりと過ぎていく猫と彼女の時間のように、ページを静かに、大切にめくりたくなる。
そんな1冊だ。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」