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9月15日は「中秋の名月」 『月光条例』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/09/15


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

9月15日は中秋の名月。本日読むべきマンガは……。


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『月光条例』 第1巻
藤田和日郎 小学館 ¥400+税


かつて旧暦では7、8、9月が秋に区分され、その真ん中にある8月を「中秋」、さらにその十五夜に見られる満月を「中秋の名月」と呼んだ。
今の暦に換算すると9月前半から10月前半にあたり、今年はきょう、9月15日が「中秋の名月」になる(ただし満月は17日)。

十五夜のポピュラーな行事といえば、お月見だ。
古来、上流階級が楽しんだ月夜の宴に、江戸期から稲や芋など収穫物へ感謝を捧げる民衆の豊作祈願の風習が混じった伝統とみられる(諸説あり)。

そんなお月さまの冴えた輝きは、美しさ・神々しさだけでなく、冷え冷えした恐ろしさを帯びて想像力を刺激する。
月は人間の精神に強く作用するといい伝えられ、「狂気の」を意味する英単語「ルナティック(lunatic)」は月を意味するラテン語「ルーナ(ルナ、luna)」およびローマ神話の月の女神ルーナが由来だという。
満月を見て変身する狼男なども「ルナティック」観念の一端だ。

さて、超自然な狂気の引き金として月を描く作品は数多いが、近年特にわかりやすかったものに『月光条例』が挙げられる。
『うしおととら』でおしもおされぬ怪奇アクション作家となった藤田和日郎が、2008年から6年間「週刊少年サンデー」で連載した少年マンガである。

数十年に一度、月から強烈な青い光が放射され、おとぎ話の世界を狂気にゆがませる「月打(ムーンストラック)」。
異常をきたしたおとぎ話の登場人物が本来のストーリーや役割に逆らい、現実世界に飛びだして大規模な破壊や殺戮を繰り広げる恐ろしい現象に、不良高校生・岩崎月光が立ち向かうというメタ・メルヘン巨編になっている。

モンスターマシンと化したカボチャの馬車で公道を暴走するシンデレラ。
最強の剣技で人を斬る桃太郎。
鋭く伸びる鼻で敵を突き刺すピノキオ……。
などなど、有名な童話キャラが心も姿もねじれ狂って現実を侵す悪夢的な光景が毎回の見どころだ。

ふりかえれば『うしおととら』に月をかたどった結界で妖怪を捕える術が登場したり、視界に入れた相手を呪い殺す怪物フクロウを描いた作品の題が『邪眼は月輪に飛ぶ』だったりと、藤田作品ではちょくちょく月が印象的に使われる。
月が人類の畏怖の対象であるからには、必然的に、怪奇を描くことにすぐれた作家は月というモチーフもすぐれて描く、ということだろう。

今宵、まずは“ルナティック“なマンガを読んで月の魔性にも思いをはせ、お月見の趣をより深くしてみるのもオツかもしれない。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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