日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『ウチの使い魔がすみません』

『ウチの使い魔がすみません』 第1巻
櫓刃鉄火 講談社 ￥590+税
（2016年9月7日発売）

魔界をのんびり旅する、ロードムービースタイルの作品。
ひ弱な悪魔の少女・パティ。
不器用な彼女が使い魔に選んだのは、人間の男性・ノーマン。
何の能力もない、ただの人間。
彼女はノーマンをお供に、失踪した父親を探す旅に出る。

人間の頭脳は、魔物をはるかに上回る武器だ。
ノーマンの肩書は「魔物研究家」。魔界の多種多様な生物を研究するのが仕事……というか趣味。
これは魔界において非常に強力。
魔物たちは力任せに、その能力（怪力、火を吐く、空を飛ぶなど）をぶつけあって、強者であることを誇示する。
真っ向勝負だと、人間はまず勝てないだろう。
しかし魔物の構造を理解して対策すれば、簡単にねじ伏せられる。
たとえば火を吐くサラマンダーは、口を開かせないことで暴発させることができる。
カーバンクルは、視線誘導してやれば額のビームを食らうことはない。

魔物を科学するノーマンは、かなりのマッドサイエンティスト。
そもそも彼が魔界に居ついているのは、知的好奇心ゆえだ。
んなもんだから、魔界にいる存在すべてにちょっかいを出す。
街行く魔物たちを、スケッチしたりサンプルをとったり。迷惑この上ない変質者だ。
パティは彼にたくさん助けられているものの、気苦労が絶えない。

この知識欲は『ダンジョン飯』でモンスターを食べたいと画策するライオスや、『亜人ちゃんは語りたい』で亜人の生徒を研究しながら相談に乗る高橋鉄男の思考に、程度の差はあれ、よく似ている。
もちろんファンタジーなので、実際の解答なんてない。
これら3つの作品はいわば「思考のロジック」を楽しむもの。
それがヒューマンドラマになったり、コメディになったりと、物語のベクトルは異なっている。
『ウチの使い魔～』は、思いっきりギャグ寄りだ。

3作品に共通するのは、生態に好奇心の強いキャラがみな、いかつい体躯の男性だというところ。
ちょっと朴念仁な風貌で、性欲がなさそうなたたずまいは、どんな変態的な行動を取っても、見ていて不安がないからかも。

＜文・たまごまご＞
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」