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『いいね! 光源氏くん』 えすとえむ 【日刊マンガガイド】

2016/10/12


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『いいね! 光源氏くん』


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『いいね! 光源氏くん』
えすとえむ 祥伝社 ¥700+税
(2016年9月8日発売)


えすとえむの新作は、あの『源氏物語』の主人公・光源氏らしきイケメンがひょんなことから普通の現代OL・藤原沙織の部屋に住みつく、シュールコメディだ。

マンション自室のすだれから、突然、直衣に烏帽子姿で光源氏が現れた。
不審者扱いして殴打してしまった罪悪感から、沙織は架空の人物なのになぜ? と戸惑いながらも居場所だけでなくファストファッションの服や食事、さらにスマホやSNSのアカウントなどを与え、なにかと世話をやく羽目に。

同著者の『はたらけ、ケンタウロス!』の勤勉なケンタウロスたちや『IPPO』の靴職人・アユムとは真逆で、光源氏は平安貴族なので働かない。
時系列的にはどうやら須磨へ流される直前だったようだが、それはさておきヒモニート、もしくは「便利な道具を出してもらう方の居候」として、すっかり平成ライフを満喫している。

抹茶フラペチーノのおいしさに感動して和歌を詠み、SNSで「いいね!」をたくさん押されてオフ会に誘われるなど、おそるべき素直さと順応性だ。
これぞモテ男たるゆえんだろうか。

光源氏のリアルタイムである平安時代は、文(ふみ)のやり取りや31文字の和歌からかもし出されるセンスにより恋愛が始まっていた。案外、平成の世とも相性がいいのかもしれない。
尽くすわりには、沙織の立ち位置は古語のほうの女房(世話役のこと)のごとき扱いだが、光源氏に情熱的に愛された女性があまり幸せにならないケースが多かったのを考えると、こんな同居生活も「いとをかし」、ということで。



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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