365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月14日は鉄道の日。本日読むべきマンガは……。
『鉄娘な3姉妹』第1巻
松山せいじ 小学館 ¥533+税
1872年10月14日、日本初の鉄道が新橋駅(初代:現在の新橋駅ではない)と横浜駅(現・桜木町駅)を結んだ。
鉄道省は50年後の1922年に10月14日を鉄道記念日に制定、1994年には運輸省により「鉄道の日」と改称された。
そんな記念すべき「鉄道の日」に、ぜひとも読んでほしいのが『鉄娘な3姉妹』だ。
鉄道開業から144年。鉄道は人々の生活の足として欠かせない存在となったが、単なる乗り物としてでなく、路線、車両、駅舎、切符、時刻表、模型といった鉄道にまつわるものを偏愛する、いわゆる鉄道ファンも増殖。鉄道マニア、鉄オタク(鉄道ヲタ)、果ては“鉄(テツ)”という究極の略称で認知されているのはご存じのとおりだ。
『鉄娘な3姉妹』は、カリスマ的な“鉄”を父親に持つ3姉妹=“鉄娘(テツコ)”の物語である。日本中のあらゆる路線を制覇し、その著書は鉄のバイブルとなっている福音寺国鐵(ふくおんじ・くにてつ)。彼には3人の娘がいたが、最愛の妻を亡くした後、長女の美章(びしょう)を北海道へ、次女の美唄(びばい)を東海へ、三女の備後(びんご)を九州へ……それぞれ親戚に預けて姿を消してしまった。
それから10年後、突如「あいたい」と書かれた手紙と大分行きの寝台特急の切符を3姉妹に送りつける。久しぶりに再会した3姉妹は、父の血を継承し、みごとな“鉄”へと成長。しかも長女は撮り鉄、次女は乗り鉄、三女は模型鉄と見事に細分化されていた。父を探すという目的で連結を果たした3人は、次々に送られてくる父からの暗号を頼りに、日本全国の路線を巡り始める。
失踪した父を3人の娘が探す旅……。あらすじだけを見れば悲壮感満点だが、基本はコメディ。このタテ軸にさほどの意味はなく、3人の鉄娘たちが、日本全国の路線を回りながら、それぞれの視点で“鉄の楽しみ方”を読者に教えてくれることがメインだ。
3姉妹は父に振り回されつつ日本全国を飛び回るが、いわゆるベタな観光にいっさい興味がないのがおもしろい。
それどころか、目的地についてすぐに引き返すこともしばしば。電車に乗ること、車窓から風景を眺めること、駅舎に触れたり、車両を撮影したりすること、路線の歴史をひもとくこと……。鉄にとっては、「電車にまつわるものがすべて」ということがよくわかる。
もちろん、著者の松山せいじ自身も筋金入りの鉄。その偏愛ぶりは車両や駅舎のすさまじい描きこみで、おわかりいただけることだろう(長女の爆乳の描きっぷりも、すさまじいが)。
ボロボロになった駅舎をいつくしみ、消えゆく車両や路線に涙する鉄たちの気持ちが、非鉄(鉄道ファンじゃない人)にもダイレクトに伝わってくる『鉄娘な3姉妹』。
本作を読めば、明日からの通勤電車が少しだけ楽しくなることうけあい!
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。10月3日発売の『内村光良ぴあ』と、10月22日公開の『金メダル男』(内村光良監督)の劇場用プログラムに参加しております。