日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『お嬢様とボクのかわいいお姫様』
『お嬢様とボクのかわいいお姫様』 第1巻
美波リン 少年画報社 ¥585+税
(2016年9月10日発売)
社会人男性のハーレムもので、「子持ち」というのはちょっと珍しい。
しかも内容の比重はどちらかというと、子育てのほうだ。
幼い娘の風花と暮らす、働き者のサラリーマン・遠山時雨は(とおやま・しぐれ)、とてもモテる。
といってもプレイボーイなわけじゃないし、イケメンでもない。
人づきあいが悪いので、社内の女性の評判がいいわけでもない。
妻を亡くして娘のためにがんばり続けるけなげな男性。
事情を知ってしまうと、彼のまじめさがいじらしくてしかたないのだ。
風花の通う幼稚園のかなえ先生。職場でいっしょの後輩・小梅。先輩のデキる女性・椿さん。
行きつけのバーのママ・麻美さん。そして「お嬢さん」こと会社の社長・深雪。
あらゆる女性が彼に接触する。時雨は極めて根がまじめなため、ほとんど女遊びをしない。
というか風花の世話でそれどころじゃない。
会社を早く退勤して送り迎えをしないと、家事をしないと、いっしょの時間を作らないと!
バーのママ・麻美さんはこういう。
「奥さんを亡くして弱ってたあたりから やつれて色気増して 狙ってたんだ」
子育て片親悲恋男性には、独特のエロスがある。
家にやってくるお嬢さんと時雨は、風花の成長を大切に大切に見守る。
時雨は父親の器の広さで、お嬢さんの悩みを知らぬ間に解決する。
お嬢さんは凛としたたたずまいで、若いながらも時雨を叱咤激励する。
風花はとても優しくしてくれる彼女になついている。どう見ても2人はお似合いのカップル。
しかし「幼稚園の先生」というポテンシャルを持ったかなえ先生は、彼女よりはるかに接点が多い。
まだまだ恋の行方はわからない……が、まずは子育て。
恋愛第一ではダメ。家族、子供、仕事、体調。大切なものを全部大切にできるのが、大人だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」