日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『はんだくん』
『はんだくん』第7巻
ヨシノサツキ スクウェア・エニックス ¥500+税
(2016年9月12日発売)
もう二度と半田くんに会えないんだ――。最終話が収録された第6巻を読み、哀しみのどん底へと突き落とされてしまった、全国の半田ファンのみなさま、お待たせしました。
そう、『はんだくん』第7巻が登場したのだ!
前巻で、「自分はみんなから嫌われている」と思いこむ超ネガティブ思考から脱却した主人公、半田清。みごとな大団円が描かれ、これ以上ないくらいの最終話かと思われたが、著者・ヨシノサツキはやってくれた。
本作に収められているのは、3本の番外編(と、おまけの4コママンガ)。
『はんだくん』のアニメ化に喜ぶ登場人物たちを描いた少しメタっぽい話、半田くんの前の席に座る謎の生徒をフィーチャーした話、いずれも読んでいてニヤニヤさせられるストーリーだ。
そして、正真正銘のラスト、番外編の3本目。
これはもう、ヨシノサツキから読者への贈り物だといっても過言ではないだろう。
そこで描かれるのは、6年後の彼ら。
半田くんをとりまく個性的な面々がグッと成長し、同窓会に集まる様子である。
委員長はコンタクト着用で垢抜けたものの大学院で怪しげな研究に没頭、ユキオはあいかわらず普通の会社で普通の生活を送るというモブっぷり、レオはチャラ男として正統進化をとげ、つっくんは整形レベルの成長を見せつける。
……が、そこに半田くんだけがいない。
もちろん、半田くんは島で書の修行中なのだから、当然っちゃ当然だが、みんなはそんなことを知るよしもない。
しかし、そこに現れたのが、半田くんの母。
予想外のゲストに驚く面々。
けれど、母が語る半田くんの想いを知り、みんなは半田くんの話で盛り上がっていく。
やはり、6年が経っても、半田くんはみんなの中心にいるのだ。
超ネガティブな半田くんを主人公にした本作。
その本当の最終話は非常にやさしく、心にじんわりと染み入るような読後感だ。
これにて本作は完全に幕を下ろしてしまったが、決して寂しくはないはず。
この贈り物のような第7巻を読めば、いつでも温かい気持ちにひたれるのだから。
<文・五十嵐 大>
'83年生まれの、引きこもり系フリーライター。デスゲーム系やバトルもの、胸キュン必至の恋愛マンガやBLまで嗜む、マンガ好きです。マイブームは、マンガ飯の再現。