365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月19日は海外旅行の日。本日読むべきマンガは……。
『旅したからって、何が変わるわけでもないけどね…。』
河村三太夫 ダイヤモンド社 ¥1.200+税
10月19日は「海外旅行の日」。「遠(10)くへ行く(19)」の語呂あわせからきているのだが、じつはどのような団体が制定したのかは不明!?
とはいえ旅行会社や海外旅行好きの間ではポピュラーで、「海外旅行の楽しみ方等について考える日」として浸透しているようだ。
さて、世のなかには無数の体験旅行記がある。
なにしろこの分野、はるか昔から大人気。マルコ・ポーロの『東方見聞録』は13世紀に書かれたものなのだから……!!
ことにエッセイマンガは海外の文化をわかりやすく伝えるのに最適だけあって、近年かなりの点数が刊行されている。
そのなかからピックアップした本作は、海外旅行ガイドブック『地球の歩き方』の公募「今、こんな旅がしてみたい!第1回コミックエッセイ大賞」から飛び出したフルカラーコミックである。
シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ……トルコに至るまで10数カ国をたどる。著者の姿をかわいらしいハナグマ(アライグマの仲間だそう)に模してつづられる本作は、いわゆるバックパッカーもの。
名所めぐりやグルメ話は少なめだが――なんてことないけどその場所、その瞬間でしか得られない出会いに満ちていて、これこそが旅の楽しみの本質ではないかと感じてしまう。
現地の人と仲よくなったり、時には恋もしちゃう。一方だまされそうになったりもすることもあるけれど、旅慣れた作者があらかじめそれを見抜いてトラブル回避するのも痛快だ。
旅行者をひっかけようと近づいてくる人を“敵視”しすぎることなく、鷹揚な目でながめる余裕もまたいい。
筆者が好きなのは、ミャンマーで合流した友人と著者がパゴダ(仏塔)に登り、1日中ボーッと景色をながめながらいろいろなことを話すというくだり。旅先でこんなふうにのんびりと時間を使う贅沢に憧れる!
旅の目的は人によって当然違うけれど……目的や意義やわかりやすい収穫がなくてもいい、それでも旅は楽しいものだと語りかけてくる力作だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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