365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月6日は谷豊の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『石ノ森章太郎デジタル大全 快傑ハリマオ』 第1巻
山田克郎(作) 石ノ森章太郎(画) 講談社 ¥400+税
11月6日は「マレーのハリマオ」こと谷豊の誕生日。
すぐにピンと来る方は少ないかと思うが、1911(明治44)年生まれの谷豊はズバリ昭和の生けるダークヒーローといった人物だ。
福岡生まれのマレー半島育ち。満州事変の頃、マレーに住む華僑たちが排日運動をしており、谷の妹はこのあおりを食って殺害されてしまう。谷は当時、家族と別れ日本で暮らしていたのだが……怒りを覚えた谷は帰国した家族と入れ替わりに単身マレーへ。仲間を募り、主に華僑を襲う盗賊団を結成したのである。
そして、ついたあだ名が「ハリマオ(マレー語で虎)」だったというわけだ。
太平洋戦争開戦後には、マレーに精通した人間を探していた日本軍から白羽の矢が立ち、スパイとして登用され大活躍。
1942(昭和17)年、30歳の若さで没したが英雄視され、戦中に彼をモデルとした映画『マライの虎』が作られたほど。
この『快傑ハリマオ』は、山田克郎の小説『魔の城』をもとにしたテレビドラマのコミカライズ版だ。
ハリマオは白いターバンに黒いサングラスがトレードマーク、日本人ということ以外は出自不明の謎の男。銃の早撃ちが得意な少年・太郎をはじめとする一匹狼たちを束ね、闇にはびこる黒幕に立ち向かう!
さっそうと馬を駆って現れ、悪者たちを一掃する! ハリマオは黄金バット、月光仮面と並ぶジャパニーズ・ヒーローの元祖である。
ちなみにこのマンガ版の連載開始は1960(昭和35)年。1954(昭和29)年にデビューした石ノ森章太郎はまだまだ若手で、『サイボーグ009』をスタートさせる4年も前のこと。70年代には、『仮面ライダー』、『人造人間キカイダー』といった日本を代表する特撮ヒーロードラマの原作をものす……。
石ノ森にとって『ハリマオ』はそこに至る重要な血肉となっていたのかもしれない。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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