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『仮面ライダーアマゾン1974[完全版]』 石ノ森章太郎 【日刊マンガガイド】

2016/09/01


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『仮面ライダーアマゾン1974[完全版]』


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『仮面ライダーアマゾン1974[完全版]』
石ノ森章太郎 復刊ドットコム ¥5,500+税
(2016年7月26日発売)


2016年に生誕45周年をむかえ、今も続く特撮ヒーロー作品「仮面ライダー」シリーズ。
今年は通常のテレビシリーズと劇場版だけでなく、Amazonプライム・ビデオ配信用の完全オリジナル作品『仮面ライダーアマゾンズ』(もちろんAmazonとアマゾンをかけているわけだ)が製作されたことも話題を呼んだ。
その新作『アマゾンズ』のベースとなった作品が、1974年に放送されたシリーズ第4作『仮面ライダーアマゾン』である。本書は「テレビマガジン」(講談社)にて連載された、そのコミック版をカラーページ完全再現で収録した単行本である。

改めて書くまでもなく、仮面ライダーシリーズの原作者は萬画家の石ノ森章太郎(石ノ森は後年、自身の作品群を「萬画」と呼称していた)である。キャラクターデザインを主として、石ノ森の発想がシリーズの根幹を形作っているのは間違いない。
だが一方、石ノ森が自らのペンでシリーズのいわゆる「原作コミック」を手がけた回数は、驚くほど少ない。まずは初代『仮面ライダー』、そして本作『仮面ライダーアマゾン』、最後に『仮面ライダーBlack』(テレビシリーズでのタイトル表記は『仮面ライダーBLACK』)の3本のみ。
なお、本書にも特別収録されている、1979年に執筆された「絵コンテ漫画 仮面ライダー」という作品も存在するが、こちらは未映像化のオリジナルストーリーで、形式も萬画と絵コンテの組みあわせという、かなり特殊な例外的作品といえる。

『アマゾン』はシリーズ4作目にして、主人公がジャングル育ちの野生児(最初は日本語でのコミュニケーションも取れず、常に半裸で行動する!)であり、変身後の敵との戦いも噛みつく・引っかく・斬り裂く(そして大量の流血!)がメインという、ファンからは「シリーズで一番の異色作」などと呼ばれる作品だ。
一方で、『アマゾン』は制作スタッフが第1作『仮面ライダー』が(特にテレビシリーズ初期13話までで)持っていた怪奇色を強く押し出した、「原点回帰」の作品としても知られている。
「原点回帰」のテレビシリーズは『仮面ライダーBLACK』も同様であり、第1作以降、石ノ森が自らの名義で原作コミックを発表したのが、『アマゾン』『Black』の2作品であったことは、決して偶然ではあるまい。

さて、この萬画版『アマゾン』だが、多忙の石ノ森にかわり、ペン入れは幼年誌などでライダーシリーズのコミカライズなどを執筆していた石川森彦が担当している。
とはいえ、全5話のうちの前半の第1・2話は、石ノ森作品ならではの天才的なコマ割りが炸裂しており、読みごたえは充分。特に、第2話の冒頭、高層ビルの無数の窓に映る敵組織ゲドンの首領・十面鬼……という奇抜なビジュアルからは、ネームと下書き作業での石ノ森の『アマゾン』に対する強い意気込みがうかがえる。

第4話からは、まだ十面鬼との決着がついていない段階で、第2の組織であるガランダー帝国の支配者・ゼロ大帝も登場。
そして続く最終話では、アマゾン・十面鬼・ゼロ大帝という、テレビシリーズでは観ることのできなかった三つ巴の戦いが繰り広げられる。

全6話ということから、かなりハイスピードな展開の本作だが、序盤の石ノ森テイストにあふれた才気ほとばしる演出を筆頭に、ライダーコミック史において語らぬわけにいかない作品だろう。
また、石ノ森テイストが若干薄い終盤も、テレビシリーズにおける「悪の首領」とは違った「第3勢力」としてのゼロ大帝の魅力など、ヒーローコミックとして充分に楽しめることは間違いない。

なお、今回の「完全版」には、前述の『絵コンテ漫画 仮面ライダー』のほか、各話の扉絵などのイラスト、そして若き日の石ノ森本人が出演している連載予告の写真記事「私は見た 怪奇青年アマゾンライダーを!」が収録されているので、石ノ森&ライダーファンの皆さんは、そちらもお楽しみに!



<文・四海鏡>
石ノ森章太郎ファンのライター。好きな石ノ森作品は『番長惑星』など。ネオライダー世代。

単行本情報

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