365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月10日は、ヴラド・ツェペシュの誕生日。本日読むべきマンガは……。
『Fate/Apocrypha』 第1巻
東出祐一郎,TYPE-MOON(作) 石田あきら(画) 近衛乙嗣(キャラクター原案) KADOKAWA ¥580+税
本日11月10日は、「串刺し公」として有名なヴラド・ツェペシュこと、ワラキア公ヴラド三世の誕生日だ。
15世紀、ルーマニアの領主となったヴラドは、母国を守るため、圧倒的な兵力で侵攻するオスマン帝国を相手に戦いを挑むこととなる。
だが、数で劣るルーマニアの軍勢が、オスマンに正面決戦で勝てるはずもない……そんななか、ヴラドが実行したのが、捕虜となったオスマン兵を串刺しにして晒し者にする苛烈な戦法だ。
また、国内の意思統一を図るため、自国の民も串刺しにして晒し者にしたとも伝えられている。
国を守るためとはいえ、非道な方法を選択したヴラドは、後世にて吸血鬼ドラキュラのモデルのひとりになるなど、悪魔的な一面が大きく取り上げられていった。
『Fate/Apocrypha』に登場するヴラド三世は、そんな後世のイメージに悩まされる人物として描かれている。
万能の願望機「聖杯」をめぐり、現代にサーヴァントとして召喚された英霊と、それを使役するマスターたち14組が、「赤」と「黒」の2陣営に分かれて繰り広げる「聖杯大戦」。
そこで召喚されたヴラドが聖杯にかける願いは、今ではすっかりおなじみな「吸血鬼」の伝承を消し去ること。その伝承ゆえに任意で吸血鬼化できる能力を得ていたりと、とことん自身に定着した汚名と向きあわされる悲劇の英霊なのだ。
近年では残虐な面だけでなく、ルーマニアを守るために奮戦した英雄として再評価されつつあるヴラド。
それゆえ、『Fate/Apocrypha』にかぎらず、2014年公開の映画『ドラキュラ ZERO』などで、フィクションでも悲劇の人として描かれる機会が多くなっている。
時とともに変化していく解釈を楽しめるのも、実在の人物を扱ったフィクションのおもしろさといえるだろう。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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