日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『鉄工所のヒカリ』

『鉄工所のヒカリ』
浦地コナツ 竹書房　￥880+税
（2016年8月8日発売）

鉄工所で忙しく働く鋼坂（こうさか）ひかりは、いつも真っ黒。
自分の身だしなみに気を使う余裕もないし、興味もあまりない。

女友達はいう。
「鉄工所なんて熱そーだし　汚れるし力仕事だし　女子には向いてないのにね」
「オシャレもできないからフツーいかないのに　エライよね！」

ひかりは、鉄マニア。鉄が好きで好きでしかたない。だから18歳にしてすぐ町工場に勤め始めた。たしかにちょっと変わり者に見られることは多いだろう。
しかし作中で描かれる町工場の先輩たちは、いっさい彼女を甘やかすことも特別扱いすることもない。女性だ、という意識をまったく持たない。同じ働く仲間として厳しく指導する。それがひかりには、うれしいようだ。

天真爛漫なひかりの対になるのが、堅物でいつも怒っている青年・鉄（くろがね）さん。
心をがっちり閉ざしており、ひかりに対してのみならず、仕事に対してものすごく厳しい。
ひかりは彼に文句をいわずついていく。技術を学びとる。
2人の性格は真逆だが、ものづくりに対する情熱と職人気質は同じだ。
2人とも油まみれで真っ黒。2人とも休みの日も工場にくるくらい、鉄工に夢中だ。

鉄工所のうんちくを多くまじえながら、鉄工所の大変さとおもしろさ、達成感、協力する姿を描く。
と同時に、働く女性へのエールを含んだ作品でもある。

先ほどの「オシャレもできない」の件。別の友だちはこういう。
「女の人って上辺でしか見てない人が多いんじゃないかと思う」
「オシャレなんて自分のため……ひかりは人のために働いている」
「その姿って汚れれば汚れるほど　オシャレするよりずっとカッコよくてキレイだと思う」
考える前に動くひかりの姿は、見ていて元気になれる。

＜文・たまごまご＞
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」