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11月12日は江川卓(元野球選手)が現役引退を表明した日 『実録たかされ』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/11/12


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

11月12日は江川卓が現役引退を表明した日。本日読むべきマンガは……。


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『実録たかされ』 第3巻
本宮ひろ志・江川卓 文藝春秋 ¥505+税


1987年のきょう11月12日、読売ジャイアンツで活躍した“怪物”江川卓投手が記者会見を開き現役引退を表明した。
当時の江川は32歳。このシーズンも13勝を挙げており、その早すぎる幕引きをだれもが惜しんだ。

引退後の江川は野球解説者として、またタレントとして活躍。翌年には自身の半生を振り返った『たかが江川されど江川』(新潮社)を共著で執筆した。
9年間のプロ野球生活について触れているのはもちろん、あの「空白の一日」についても言及されており、これが大きな反響を呼び、村上春樹『ノルウェイの森』吉本ばなな『キッチン』と並んで1988年のベストセラーランキングに名を連ねた。

この『たかが江川されど江川』からの着想でタイトルをつけられたのが、江川卓が原作を手がけ、本宮ひろ志がマンガを描いた『実録たかされ』(1998年)である。「たかされ」とは、「たかが」と「されど」を組みあわせた略称だ。

もともと江川は現役時代から本宮ひろ志と交流があり、「週刊少年ジャンプ」1982年10号に掲載された本宮の読み切り作品『実録市川南一丁目』(『やぶれかぶれ』第1巻に収録)には本宮と江川がいっしょにゴルフをラウンドしている姿が描かれている。その交友関係があればこそ実現した作品といえるだろう。

ちなみに、本作の前に描かれた江川×本宮コンビ最初の作品『たかされ』はフィクションであった。
江川の高校時代から「空白の一日」を経てプロ入りまでをフォーカスした本作はまったくの別物であり、だからこそタイトルに「実録」がつく。

本宮ひろ志というと『男一匹ガキ大将』『サラリーマン金太郎』に代表されるように、ノリと勢いが強烈な作風だ。
ノンフィクションというと意外な気もするかもしれないが、参議院議員選挙にみずから出馬するルポルタージュ『やぶれかぶれ』(結局は出馬を断念)があるように、このジャンルでもたしかな手腕を見せる。

当時の同級生、相手チーム、試合を裁いた審判にまで証言を聞いているあたりは、作品に対する誠実さがうかがえる。
何しろ作中で江川と本宮が議論するシーンまであるのだから、なかなかに興味深い。

若い頃の江川にある「持つ者」特有の傲慢さをつまびらかにし、それによるまわりとの軋轢も描き、アンチヒーローとしての江川の側面を切り取っているところに本宮節も感じられる。

近年は『江川と西本』(森高夕次・作、星野泰視・画)で、プロ入り後の投手・江川の姿が描かれている。
昭和の最後をあらゆる面で騒がせた“怪物”がどのような人物であったのか。『実録たかされ』も併読して、多角的な視点から見てみるのもいいだろう。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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