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『サラリーマン金太郎 五十歳』第1巻 本宮ひろ志 【日刊マンガガイド】

2015/08/26


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『サラリーマン金太郎 五十歳』第1巻
本宮ひろ志 集英社 ¥514+税
(2015年7月17日発売)


本作は『サラリーマン金太郎』『サラリーマン金太郎 マネーウォーズ編』『新サラリーマン金太郎』、『サラリーマン金太郎 順不同』に続くシリーズ最新作である。『サラリーマン金太郎 順不同』はパラレル的な外伝であるため、時系列としては『新サラリーマン金太郎』に続く最新の正編が今回の『サラリーマン金太郎 五十歳』、という位置づけだ。

今シリーズの金太郎は、主都電力という電力会社にヒラ社員として入社することになる。
主都電力は「原発がふっとんでいる電力会社」と説明されるように、モデルはもちろん東京電力。つまり「金太郎が東電をぶっつぶす話」になりそうである。

本宮ひろ志という作家は、じつはかなり初期の段階からエネルギー問題を作中で扱ってきた。
昭和43(1968)年に「少年ジャンプ」で連載を開始した出世作『男一匹ガキ大将』、主人公・戸川万吉が日本中の不良を倒していく番長マンガだが、中盤にアメリカのコックベイラー財団が日本乗っ取りを企図し、アラブゲリラを装ってペルシャ湾の日本の石油タンカーを次々と沈める。石油供給を絶たれた日本を救うため、万吉は子分たちに中東諸国に原油を買いつけに行かせ、ペルシャ湾突破を図るいっぽう、東京湾でベイラー財団の艦隊に立ち向かっていった。石油危機という当時の情勢に、敏感に反応したわけである。

また『サラリーマン金太郎』でも、ナビリア(架空の国)に海外赴任した金太郎は石油を採掘した。
長年に渡って資源・エネルギー問題について自覚的であった本宮が、主都電力(≠東電)について触れるのだから、期待せずにはいられない。

経済や政治をテーマとして扱う青年マンガでは、学者や専門家の受け売りをそのまま採用している作品もある。たしかにリアリティを求めるならそれも理解できよう。
しかしマンガで読む以上、マンガ的な思考の飛躍とかダイナミズムを求めてしまうものだ。その面での“ジャンプ力”は、本宮の専売特許ともいえる。

なお、『サラリーマン金太郎 五十歳』には、暴走族上がりの国会議員という、若き日の金太郎を思い起こさせるようなキャラクター・伊達三郎が登場。
金太郎と三郎はどのような出会いをするのか。強烈な個性がぶつかりあう瞬間も待ち遠しい。
五十歳になった金太郎、いまのところずいぶんと大人しく物わかりがいいようだが、はたして……?



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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