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『学生 島耕作』第1巻 弘兼憲史 【日刊マンガガイド】

2014/12/13


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『学生 島耕作』第1巻
弘兼憲史 講談社 \556+税
(2014年11月21日発売)


島耕作といえばセックスである。
異論は認めないので、いま一度断言しよう。島耕作といえばセックスである。

1983年から講談社「モーニング」で連載が開始した『課長 島耕作』は、主人公・島耕作が作中で肩書きが変わるたびに『部長』『取締役』『常務』『専務』『社長』『会長』と改題し、現在まで続いている。
当初は「団塊の世代のビジネスマン物語」としてスタートしたが、次第に「太閤記」さながらの出世物語としての色彩を強めていった。そして島耕作の出世にともなって、物語の中心はビジネスの最前線から会合や視察へと移っていき、その時代の経済状況を解説するシークエンスも増えていく。

それゆえに今読み返すと、まるで大河ドラマの時代劇を見ているかのような気分になる。いわば「昭和企業クロニクル」とでも言おうか。
リアルタイムを知らない世代からすれば、それが戦国時代だろうと幕末だろうと、あるいはバブル期だろうと、「時代劇的」だろう。

さて、時代劇の出世物語の代表格である山岡荘八『異本太閤記』といえば、豊臣秀吉がでまかせと才気で成り上がっていく出世譚だが、島耕作の場合は、女、女、女!(一部同性愛者を含む)
なにかピンチがあるたびに、オネエちゃんが助け船を出してくれるのだから、旦那、けっこうな<槍働き>でございますよ。

いま一度、断言しよう。島耕作といえばセックスである。

それでいて派閥争いや痴情のもつれとは無関係。「It’s non of my business」(意訳:あっしには関わりのねぇことでござんす)と、軽やかに切り抜ける。スマートで、モテて、出世競争にも勝利して……。
はぁ~、あやかりたい、あやかりたい。

こういった『課長』から『会長』までの団塊出世ドリーム路線とは別に、いわばスピンアウト作品として2001年からスタートしたのが『ヤング島耕作』(講談社「イブニング」掲載)だ。これは初芝電器産業に就職した当時の島耕作の物語である。
こちらも順調にストーリーが進み、玲子(最初の奥さん)と出会い、出世して『係長』となり、そして『課長』時代へと物語がつながった。

では次はどうするのか? と熱心な島耕作フリークがヤキモキしているところに登場したのが、本作『学生 島耕作』だ。
これにはマイった。なにせ『学生』である。島耕作が早稲田大学に入学し、岩国から上京するところから物語が始まるのだが、学生だから「出世物語」とは無縁。
学生運動に揺れる1966年当時の世相を映す「時代劇的側面」はバッチリな一方で、18歳島耕作は完全無欠の童貞であり、「俺は童貞(チェリーボーイ)だ」などとモノローグで宣言する始末。なんだ、セックスがないじゃないか!

しかし、そこは御大・弘兼憲史。短編『少年 島耕作』(『社長 島耕作』第14巻に収録)のヒロイン・三沢淳子が再登場! 島耕作の、ファーストキスの相手だッ!! よっ、待ってましたッ!!!
といったわけで、モラトリアムの島耕作が学生生活を送りながら、いかにしてデート資金を稼ごうか、どうやって童貞を捨てようか苦闘するのが、『学生 島耕作』である。

どんなにモテる男だろうと、かつてはみんな童貞だった。
本作は、島耕作のルーツが詰まった作品といえるだろう。島耕作の初体験を、刮目して見よッッ!!!

最後に断言したい。島耕作といえば、セックスである。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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