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【きょうのマンガ】8月9日はシャロン・テート殺害事件の日! おすすめするのは『ヘルタースケルター』!

2014/08/09


HelterSkelter_s

『ヘルタースケルター』
岡崎京子 祥伝社 \1200+税


1969年8月9日、映画監督ロマン・ポランスキー監督の妻でもある女優のシャロン・テートが、ロサンゼルスの自宅で殺害された。
殺害犯として逮捕された5人組は、チャールズ・マンソンという男性を狂信的に指導者として仰ぐ、カルト集団(ファミリー、マンソン・ファミリー)のメンバーであった。
マンソンはキリスト教的終末思想の持ち主で、世界の最終戦争(ハルマゲドン)を予言。この最終戦争のことを「ヘルター・スケルター(Helter Skelter)」と呼称していたのである。

ヘルター・スケルターとは、もともとは遊園地にある螺旋状の滑り台のことで、現代のウォータースライダーを想像すれば大きさや形状をイメージしやすい。
語句としては「狼狽する」「混乱する」といった意味で使われ、ビートルズの楽曲タイトルにも使用された。アルバム『ザ・ビートルズ』(通称「ホワイトアルバム」)に収録されている「ヘルター・スケルター」だ。マンソンも、この曲を聴いて自身の思想を育んだといわれている。
そして、この狂騒的な曲に着想を得たと思われる日本のマンガ作品が、岡崎京子『ヘルタースケルター』である。

主人公りりこは美容整形によって全身を作りかえ、その美貌によってトップモデルになる。
しかし、芸能界での商業的な成功とは裏腹に、整形の副作用と強迫観念から心身ともに衰弱。彼女は忘れ去られることを恐れ、「カメラがシャッターを押すたびに 空っぽになってゆく気がする」と感じだす。
大量消費社会の消耗品であることを自覚しているがゆえ、他人からどう見られているかに執着し、生まれながらの美人・吉川こずえが台頭してくると、りりこの妄執は加速していく。

2012年には、蜷川実花監督で実写映画化された本作。
クライマックスでりりこは、とあるスキャンダルについて記者会見を求められるのだが、そこで取った行動が、原作と映画版では異なる。
この行動によって、「他人の目」に対するりりこの考え方、ひいては作品全体を貫くテーマが様変わりするので、両者の違いを見比べてみるといいだろう。

ちなみに、作中でりりこに関するスクープ記事に「R・ポランスキーの新作にりりこが出演するらしい」との記述があり、やはり『ヘルター・スケルター』を強く意識させる。そして原作ラスト、りりこの後輩・吉川こずえはメキシコのクラブで流れてきた曲を聴いて「この曲大好き」とつぶやく。
楽曲はもちろん、ビートルズの「ヘルター・スケルター」である。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。

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