日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『もう一度あいたい-せつなすぎる よしまさこ蔵出しベスト』
『もう一度あいたい-せつなすぎる よしまさこ蔵出しベスト』
よしまさこ 興陽館 ¥925+税
(2016年10月3日発売)
「せつなすぎる」と銘打たれたこの作品集は、80年代から現在まで、やわらかな絵で味わい深いストーリーを描いてきたよしまさこの魅力がたっぷりつまっている。
表題作は、なんと毎週40ページを連載! していたという驚きのエピソードを持つ作品『もう一度あいたい』。
主人公・清美が、海辺の高校を選んだ理由は、本当にたったひとつ。
去年の秋、この学校の文化祭で出逢ったあの人に、とにかくもう一度会いたい、それだけ――。
80年代前半に描かれた作品を今回リマスターして収録しているが、あの時代の独特の空気がネームにも絵柄にもあふれていて、懐かしくも甘ずっぱい気持ちになってしまう。
ところどころ、噴き出してしまうようなギャグもちりばめられ、パワフルで、でもあたたかく胸に迫ってきて、200ページの分量を一気に読ませるパワーがある。
ここで「せつない」気持ちとは何か、と考えてみたい。
それは胸を締めつけられる痛みであり、しかし「悲しい」とは違って、どこかに甘い響きがある感覚だ。
よしまさこの描く「せつなさ」は、だれかに焦がれる胸の痛みであり、それは往々にして恋である。
彼女の作品では、その恋が実ろうが破れようが、甘い胸の痛みの向こうに希望をはらんでいる。
それが多くの読者を揺さぶった著者の魅力ではあるまいか。
収録されたほかの4編でも、それぞれのせつなさが存分に味わえ、そしてせつないながらも読後感の心地良い1冊だ。
昔からのファンの方にも、よしまさこ作品を初めて手にする方にも、ぜひおすすめしたい。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」