日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『女騎士、経理になる。』
『女騎士、経理になる。』 第3巻
Rootport(作) 三ツ矢彰(画) 幻冬舎 ¥630+税
(2016年10月24日発売)
オークに捕まえられた、誇り高き女騎士シルヴィアは、苦痛に顔をゆがめながらいった。
「くっ…殺せ!」
しかしオークはいう。
「そうはいくか!! 今日から貴様はウチの会社の経理のお姉さんだ!!」
かくして、土下座をして頼みこんできたオークのお手伝いをするため、彼女は経理の勉強を始めた。
ファンタジー世界を舞台に、会計管理・経済の仕組みを描く。
正義の女騎士は困っている人を見過ごせない。
だから厄介事に首を突っこんでしまうし、同時にいろいろな人に信頼もされる。
いかんせん剣と魔法が幅をきかせる場所なので、公正さがあまりまかり通っていない。
こずるい策を練るのも、難しくはない。人身売買や、殺人すらありうる世界だ。
知識のない人からぼったくり、お金をちょろまかすのは日常茶飯事。
そんななかで、女騎士は経理の知識を利用して、困っている人を救うべく奔走する。
人間界の銀行の立て直しの手伝いをし、潰れる寸前の肉屋の借金の肩がわりをする。
もっとも大きな活躍は、奴隷として売られていたダークエルフを、非常に高い額(バイトの年収10年分!)でもらい受け、自由にしたこと。このダークエルフのルカが、非常に経済に強い。2人で手を組んで、お金の数字を武器に戦う。
実際の経理技術を、空想世界のやりとりにたとえて表現しているので、ものすごくわかりやすい。
第3巻では先物買いをする人々の様子が描かれる。売買されるのはマンドラゴラの「株」。
高騰していく株。借金をする人々。未来は儲かると信じていた。
しかしマンドラゴラ株の価格は暴落。町は滅びた。
現実にもありますね、こういうこと。
人間は嘘をつく。お金は嘘をつかない。
「正しい帳簿さえあれば あたしは世界だって救ってみせる」というルカの計算技術と、偽善と呼ばれようとも信念を貫く正義の人シルヴィアが、次々論破していくのが爽快。
そして計算にいきづまった時、シルヴィアは叫ぶのだ。
「くっ…殺せ!」
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」