日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『給食の時間です。』
『給食の時間です。』 第1巻
飯田 小学館 ¥552+税
(2016年11月11日発売)
5年生の佐野和彦(さの・かずひこ)は、給食が好きではなかった。いっしょに食べる友人がいなかったからだ。
ほかのグループに「俺も一緒に食べていい?」といえない。
彼のとなりの席の岩谷実子(いわたに・みこ)。彼女はひとりで給食をもりもり食べている。
給食が大好きな岩谷といっしょに食べることになった佐野。「おいしい」「好き」と心の底からいう彼女を見て、佐野のなかのわだかまりが少しずつ解けていく。
塾通いをしていて、岩谷と佐野の仲をばかにする少年・石丸。
体育の授業でまじめに練習するのをあざ笑う坂本。
仲よしな友だちが多くクラスでもかなり目立つ八重沢。
佐野は、最初はみんな苦手でしかたなかった。八重沢や坂本とは口論もしている。
しかし給食や調理実習などを経て、しだいにわかってくる。
ほかの子たちのことは、案外知らないものだと。
プラス思考でなんでも「好き」になれると考えている岩谷。彼女と接することで佐野の視野はどんどん広がる。
もっとも岩谷だって、苦手なものはあった。食べものには好き嫌いが多く、グリーンピースやピーマンが食べられなかったらしい。
だが彼女は佐野といることが、本当に楽しいのだ。本当に今は給食がおいしいのだ。
岩谷視点はいっさい描かれていないが、彼女もまた、佐野から影響を受けて育っている。
印象的なのは、クラスの人気者・阿久津の立ち回りだ。
かっこよく、友だちが多い阿久津。佐野の憧れの存在。最初は友だちでもなんでもなかったが、佐野が岩谷と接してポジティブになるにつれ、いつしか仲よくなっていく。
阿久津はヒーローではない。自分では「調子いいんだ」という。
パッと見、作中では阿久津はいかにも人気ありそうないい奴、として描かれている。しかしそれは佐野視点だからだ。
ちょっとだけ描かれる彼の家庭の様子を見ると、彼なりにやはり苦労している。
きっとそのあたりも、給食の時間の出来事を経ていけばいずれ、見えてくるだろう。
「一緒に食べる」というのは、だれかの知らない一面を見つけることでもあるのだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」