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1月22日はカレーライスの日 『懐古的洋食事情』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/01/22


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『YOU漫画文庫 新編懐古的洋食事情』第1巻
市川ジュン 集英社 \590+税


1月22日は「カレーライスの日」。1982(昭和57)年のこの日、全国学校栄養士協議会の決定により、全国の小中学校で一斉にカレー給食が出されたことに由来する。
「国民食」といえるメニューだけに、もっと早くから給食に導入されていてもおかしくない気がするが、給食にご飯が出るようになったのは、この頃のこと。給食設備の問題などがネックになっていたそうである。

インドで生まれた“カレー”がイギリスを経て、さまざまな西洋文化とともに日本にもたらされたのは幕末から明治初頭にかけて。そして、日本ならではのカレーライスが生まれていったのはご存知の通り。

『懐古的洋食事情』は、まさに明治・ 大正・昭和初期を舞台に洋食にまつわるエピソードを描いた連作短編集である。
時代順に編集された文庫版2巻に収められた「昭和元年のライスカレー」という一編は、お見合い結婚したばかりの若き夫婦の物語だ。

お嬢様育ちの愛子は、最先端の洋装で銀座を闊歩したモダンガール。料理はまるでできないが、これまたハイカラ趣味の夫君が選んだ新居のアパートの最新型の台所に魅せられ、一念発起。
しかし、あわてて実母に習った懐石風の味も、夫君の母に教えを乞うた家庭の味も、彼のお眼鏡にはかなわない。彼は、愛子ならではの料理……つまりは2人の新生活とともに、その味を育てていくことを望んでいたのだ。
かくして、庶民の洋食として普及しつつあったライスカレーを家で作ってみようと試みる2人。ああ、こうして日本の“おうちのカレー”が育っていったんだなぁ、と心地よい読後感にひたってしまう。

カレーライス、ハヤシライス、オムライス、コロッケにトンカツ……さまざまな洋食メニューとそれをめぐる人々の生き方がシンクロして、妙なる味を表現する絶品の連作集。
食べる喜びはすなわち生きる喜び。「おいしい!」と思う喜びに敏感であれたなら、どんな1日にだって希望の光が感じられるのではないだろうか。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」

単行本情報

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